正規直交ウェーブレットを用いることによって、ある現象をスケールと位置について同時に展開することができる。この特性を用いて、大気中の大規模擾乱とその周囲のスケールが異なる擾乱の関係を明らかにすることが期待できます。 まず、正規直交ウェーブレット変換を用いたエネルギー解析によって、太平洋ブロッキングの形成時の運動エネルギーの流れを明らかにしました。太平洋ブロッキングの西側にある総観規模擾乱からエネルギーを得る逆カスケードだけでなく、ブロッキング高気圧と同スケールの低圧場からもエネルギーを得ていることを明らかにした論文が受理掲載されました。 続いて、エネルギーとともに保存量であるエンストロフィーについても同様の研究を行ないました。結果はエネルギーの場合と非常に近いものでした。しかし、より小スケールの擾乱も相互作用を行なっているという結果が得られました。 また、日本の冬の寒暖と関連のある北極振動(Ao)についてエネルギー解析を行ない、様々なスケール・位置の擾乱が平均流とやりとりする運動エネルギーの流れを調べました。Aoが強まる際に、大西洋側で平均流を加速し、Aoが弱まる際に太平洋側で平均流が減速する傾向があることが示唆されました。
|