研究概要 |
「新規機能性タンパク質の選択法」の開発はポストゲノム時代を迎えた今日、非常に注目されている。 この手法を用いることにより、タンパク質のプールの中から様々な機能を持つタンパク質を見つけだしてくることが出来る。 これまでに提案されている主な「タンパク質の選択法」はファージディスプレイ法、プラスミドディスプレイ法などのin vivoのステップを用いるもので、1)タンパク質の大きさが制御されたり、2)細胞毒性を示す重要なタンパク質を用いることが出来ない、3)プールの大きさが制御される、4)ホスト細胞の環境に影響される、などの問題があった。近年になり、リボゾームディスプレイ法、mRNAディスプレイ法などの完全に無細胞でタンパク質の選択を行う手段が幾つか提案された。しかし、これらの手法も複合体の安定性や手法の煩雑さが問題となり、必ずしも最適化された手法とは言えない。 我々はリシンA鎖を選択の対象となるタンパク質のC端末にfusionする手法を構築し、モデルタンパク質の選択に成功した。(Zhou et al. J. Am. Chem. Soc. 2002,124,538)。この手法ではリシンA鎖タンパク質を用いることにより、タンパク質-mRNA複合体を、極めて安定に存在させる事に成功した。これにより従来の手法に比べて、初期プールのポピュレーションを大きく維持することが出来る。さらにポピュレーションを減少させるステップも少ないため、タンパク質の選択の効率が他の手法に比べて優れている。また、この手法には化学合成などの複雑なステップを伴わないため、極めて簡単に操作が行える。 さらに、我々はタンパク質-mRNA複合体を、安定に存在させる事が可能となる別の手法の開発にも成功した(Fujita et al. J.Med.Chem.,2002,45,1598)。この水泡は、タンパク質-mRNA複合体を形成させるための仲介として、Tatタンパク質とTatアプタマー(RNAのモチーフ)を用いる。この二つの因子は翻訳中に極めて強く結合するため、強固な複合体の形勢が可能である。この手法もポピュレーションを減少させるステップが少なく、扱いやすい。
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