本研究は、少年法制を中核とする青少年犯罪・不良化対策の史的検討を通じて、戦前から戦後にかけての「保護」概念の諸相および変遷過程の解明を課題としている。今年度は、1.戦後の少年法制度改革を考察するため国立国会図書館憲政資料室等に所蔵されているGHQ関係文書の読み取り作業を継続する一方、2.とくに校外教護・保導史の事例研究に必要な学校文書の発掘に力を入れ、大阪をフィールドとした地方調査を集中的に実施した。そこで以下に「2.」における研究成果を中心に報告したいと思う。 (1)大阪府中等学校校外教護聯盟関係資料の調査・収集を目的として大阪府立北野高等学校、岸和田高等学校、豊中高等学校(豊稜資料室)の各校を訪問した。(1)北野では1920年代以降の「大阪府中学校長会記録」や「職員会議録」などの一次資料を検討し、その結果として、教護聯盟の設立経緯、聯盟と加盟学校との連絡網の整備に関する実態を詳細に把握することができた。(2)岸和田では「父兄召喚簿」「生徒懲戒録」(金庫保存)等の重要文書を考察した結果、教護聯盟設立以降に学生生徒の校外生活にかかわる懲戒理由・内容が増加する傾向が確認できた。これは学校側がそれ自体独自な法規範を形成していく過程をみるうえで興味深い点であるので、今後、堺中学校(現、三国丘高等学校)のケースも加えて検討する予定である。(3)豊中ではリーフレット『校外教護』など未見の資料を入手することができた。(2)大阪府立中央図書館、中之島図書館において教護聯盟関係の資料調査を行った。とくに中之島図書館においては、大阪府教護聯盟が発行していた1929〜39年までの10年間分の研究資料が70数冊所蔵されていることがわかった。これらの資料は漸次的に収集していくつもりである。なお、大阪のみならず兵庫県立長田高等学校の学校文書など、神戸保導聯盟関係資料もいずれ調査したいと考えている。
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