金融市場においてHerding behaviorが引き起こす問題の中で、本年度は昨年度の研究の成果を用いて、日本の投資信託の行動分析と収益力の評価についての実証分析を行った。 投資信託の収益力をどのように評価するかという問題は、金融市場を活性化していく上で非常に重要な問題である。また、投資信託は金融市場における代表的な機関投資家であり、その収益力の評価は、金融市場と投資家行動の分析の代表的な応用分野である。アメリカにおいては、CAPMやFama-Frenchの3ファクターモデルなどの株価モデル、そして一昨年から我々が行ってきたHerding behaviorと株価モメンタムの理論も応用されている。 一方、日本の金融市場では、アメリカの金融市場と対照的に、株価に負のモメンタム効果が現れる。また、90年代末には「ITバブル」と言われる、強いHerding behabiorと、明らかな市場の非効率性が見られる。 我々は、Cahart(1997)やPastor/Stambaugh(2002)の手法を利用し、これらの問題を考慮しながら日本の投資信託の投資行動の分析および収益力の評価を行った。そして、日本の投資信託の投資行動や収益力がアメリカの投資信託とどのように異なっているか、そしてそれは日米の金融市場の相違とどのように関係しているかを分析した。中でも、日本では株価モメンタムと投信のパフォーマンスに、非常に強く、かつ理論と矛盾する相関関係があることを発見し、その原因を分析した。また、「ITバブル」期に、投資信託においてもきわめて強いHerdingが見られ、それが投信のパフォーマンスに強い影響を与えていることを発見した。 これらの研究成果を証券アナリストジャーナルの2002年11月号に論文として掲載した。また2002年12月のモダン・ポートフォリオ・セオリー・フォーラムにおいて口頭でも発表を行った。
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