新たな逆合成解析により、オキサチアゼピン環を11位-12位で切断してチオホルムアルデヒドがヒドロキシルアミンと縮合してできるチオールからの環化によりオキサチアゼピン環を形成するものとした。一方、テトラヒドロ-β-カルボリン骨格は、ガーナーアルデヒドとトリプタミン誘導体からのPictet-Spengler反応によって、アルデヒドの不斉を利用して1位の不斉中心を構築するものとした。 Pictet-Spengler反応前駆体は、Macorらの分子内Heck反応を用いたインドール合成法により効率的に合成することができた。続くPictet-Spengler反応は、種々の条件検討の結果、allylic strainから考えるとかさ高い方向から反応が進行し、望まない立体が主生成物として得られることがわかった。唯一、トルエン溶媒中ジクロロ酢酸を酸触媒として用いた場合のみ、望む立体を主生成物として得ることができた。次にインドールの窒素をACE基で保護した後、ヒドロキシルアミン部位のメチルチオメチル基を塩化スルフリルで酸化、チオ酢酸処理により、形式上メチル基をアセチル基へと変換することができた。最後にガーナーアルデヒド部のアセトニドを除去して、生じた一級水酸基をメシル化した後、アセチル基の除去を行うと、生じたチオールが速やかに環化して望みのオキサチアゼピン体を収率よく得ることに成功した。ここで環化と同時にACE基が脱保護されるのが大きな特徴である。最後にBoc基の脱保護とメチルエーテルの切断を行い、ユーディストミンCの全合成を達成した。また、本手法を用いて芳香環上に様々な置換基の入った天然にはないユーディストミン誘導体も合成することができた。
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