研究概要 |
弦の場の理論は今のところ,弦理論の非摂動効果を記述しはっきりとした弦理論的な意味づけを持つ唯一の理論である.最近では,存在が期待される弦理論の様々な真空が,弦の場の理論やその有効場の理論の古典解として見つかってきている.しかし,様々な古典解を定量的な議論などにより見つけていく時,作用の持つ対称性や作用が満たすべき条件などを見落としている可能性がある.本研究ではそのような弦の場の理論の持つ一般的な代数構造について,古典的なレベルで研究した. 弦の場の理論の一般論としては,主に2つの問題があった.一つは弦の場の理論の背景時空非依存性である.そしてもう一つは,ある共形不変な背景時空の周りで定義された異なる弦の場の理論の間の関係である.つまり,ある共形不変な背景時空上で,定義できる弦の場の理論の作用は実は無限個ある.これらの2つの大きな問題は,その理論の複雑さゆえ,古典的な弦の場の理論についてでさえあまり理解されないままになってした.本研究では後者の問題に関して,古典的な弦の場の理論の持つホモトピー代数構造に注目することにより,同じ共形背景時空上のすべての古典的な開弦の場の理論は擬同型であることを示し,京都大学基礎物理学研究所での研究会「場の理論2002」,日本物理学会2002年秋季大会で発表した.さらに最近,それは擬同型であるだけでなく同型であることが分かった.これは,固定した共形背景時空上のすべての古典的な開弦の場の理論は場の再定義で移り合い,つまり物理的に等価であることを意味する. その他,非可換トーラスで記述される弦理論について得られた結果を,日本物理学会第57回年次大会,東京大学大学院数理科学研究科での研究会「Summer School数理物理2002;非可換幾何学と数理物理」で発表した.
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