平成14年度は、主に前年度の現地調査で得られたデータの整理と日本国内での資料収集を行った。前年度は2度にわたってセネガル国の首都ダカール、フランス国パリにてガラス絵というセネガルの工芸品に関する現地調査を行った。調査で収集したデータは、ガラス絵のバイヤー・ガラス絵作家・ガラス絵以外の造形作家を対象に行ったインタビュー、写真資料、参与観察、研究機関及び美術館等で収集した文書資料に及ぶ。ところで「アフリカの空洞化」といわれるほどアフリカからヨーロッパへの移民の流出問題が深刻になりつつある。現在セネガルからヨーロッパへの移民の行き先の第1位はフランスであるが、第2位はイタリアである。よって今年度は移民の流出先、またガラス絵のマーケットとしてのイタリアに関する文献を広く収集した。中心は移民問題に関するものであるが、セネガルのガラス絵の徒弟制との比較を行うための、イタリア・インダストリアル・デザインに関する文献も収集した。文書資料収集と平行して、東京でもデザイン関係者へのインタビューを行った。 平成15年1月には1ヶ月に渡ってイタリアのミラノ市で文書資料の収集と来年度以降の更なる調査のための下調べを行った。 本研究は最終的には文化人類学的な見地により、セネガルのガラス絵の制作の現場のミクロな記述、ヨーロッパを中心としたそのマーケットの機構の解明、美を生み出す組織としてのセネガルガラス絵の徒弟制とイタリア・インダストリアル・デザインのデザイナーの職業的社会化の過程の比較を含む論文に結実する予定である。
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