1.高スピン状態における角運動量射影の研究を行った。特に、ノルムオーバーラップカーネル関数と呼ばれるオイラー角に関する関数の特異点の幾何学的研究を行った。高スピンになるにつれて特異点の数が増加すること、およびそのトポロジーが複雑になることを数値的に突き止めることに成功した。角運動量射影の精度は、これら得意点からくる補正を加えるか加えないかによって、影響をうけることを示し、その解決法(数値アルゴリズム、および関連する理論的枠組)提案した。この方法に基づいて、中性子過剰な希土類アイソトープの一つである、ディスプロジウム170の高スピン状態を計算し、その結果を解析した。これらの研究の結果は2002年秋の日本物理学界にて発表した。論文は準備中(草稿の一部は完成)で完成次第投稿する予定。 2.回転群(0(3))などの連続群における自発的対称性の破れに相当する現象を、離散群(D2)について生成座標法の観点より研究した。具体的には、3軸変形した平均場をもつ原子核の動的回転(揺動運動)の励起モードの研究を、自己無撞着な3次元傾斜軸クランキング計算にもとづいて、行った。まず古典力学の枠内で、3軸変形した剛体の運動の考察をオイラーの微分方程式を数値的に解いて調べ、有限多体系である原子核の揺動運動と比較した。また、Bohr-Mottelson模型から求まる質量パラメータの下に、傾斜角を力学変数とする1次元シュレディンガー方程式を解くことで、平均場近似で得られた状態を量子化し、その励起スペクトルの調和性や非調和性などを考察した。この研究の結果は論文にまとめ、Physics Letters B、およびLos Alamos e-print serverに投稿した。
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