昨年までの検討によりヒト脳由来のヘパラン硫酸プロテオグリカンであるグリピカン-1が凝集化Aβ40とヘパラン硫酸鎖依存的に結合すること、そしてこのグリピカン-1が細胞膜上のラフトあるいはカベオラと呼ばれる特異的な微小ドメインにAβとともに集積していることが明らかとなった。以上の結果から、細胞膜上の限局された場において効率的にAβとグリピカン-1が結合することで、Aβの安定性や凝集体形成が促進されている可能性が示唆された。さらにグリピカン-1の生理的な役割を調べるため、ヒトneuroblastoma細胞であるSH-SY5Y細胞にグリピカン-1を強制発現させた細胞を作成し解析した。まず、MTT法により細胞の生存率を検討した結果、APPとグリピカン-1を共発現させた細胞では経時的に生存率が減少していったが、グリピカン-1単独では生存率に変化は見られなかった。また、Thapsigargin処理により小胞体ストレスを誘導した場合、APPとグリピカン-1の共発現細胞においてAPP単独発現細胞よりもストレスに対して脆弱性を示した。この他、SH-SY5Y細胞の培養液中にAβを加えて培養後、内因性のグリピカン-1の発現を調べた結果、無処理の細胞に比べてグリピカン-1の発現に増加が見られた。これらの結果から、脳内においてAβ産生が亢進するとグリピカン-1の発現が増加し、それに伴い神経細胞死が起きやすくなると考えられる。
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