EpsteinーBarr ウィルスによるヒトTリンパ球発がんとその機構

1989 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 01015001
• 研究機関: 北海道大学
• 研究代表者: 大里 外誉郎 北海道大学, 医学部, 教授 (30000912)
• 研究分担者: 綾 隆夫 北海道大学, 医学部, 助手 (20002272) ; 水野 文雄 北海道大学, 医学部, 助教授 (50001904)
• キーワード: EpsteinーBarr ウイルス / 日和見 リンパ腫 / 進行性鼻壊疽 / T細胞リンパ腫

研究概要

研究目的:ヘルペスウイルス群に属するEpsteinー Barrウイルス(EBV)は、in vitroでヒト正常Bリンパ球をリンパ芽球へとトランスフォームし、臨床的にB細胞腫瘍の病因と密接に関連している。しかし、EBVは10^8ダルトンの巨大なゲノムDNAをもち、その機能はまだ十分解明されていないことから、EBVの向リンパ球感染性はB細胞以外にも発揮される可能性が考えられる。本研究は、種々のリンパ増殖疾患におけるEBVゲノムと細胞表面形質両面の検索により、EBV起因リンパ腫瘍の多様性を明らかにし、その感染・ガン化の機構を解明することを目的とする。
成績:1)EBVゲノム陽性T細胞リンパ腫の同定:過去1年間に経験した20例のEBV DNA陽性・核内抗原EBNA陽性日和見リンパ腫の表面マーカーを検索し、うちB細胞リンパ腫15例に対してT細胞リンパ腫が4例に認められた。なお、残りの1例は非B非Tの性状を示した。他方、過去1年間にT細胞リンパ腫と同定された進行性鼻壊疽6例のすべてが、EBV DNAおよびEBNA陽性であった。2)Tリンパ球のEBV感受性:次いで、上記のEBV陽性T細胞リンパ腫細胞をflow cytometryによりその表面形質を検索したがEBV吸着レセプターの発現は見られなかった。また、正常Tリンパ球についてもEBVレセプターは検出されず、EBV感受性を示さなかった。
以上の成績は、EBVが従来確立しているB細胞腫瘍の起因にとどまらず、T細胞がん原因子としての可能性をも強く示唆するものである。その作用機構を明らかにすることが今後の課題と考えられる。

研究成果

• [文献書誌] Kikuta,H.: "Sites of EpsteinーBarr virus replication in acute and cbronic active EpsteinーBarr virus infections." Intervirology. 30. 346-350 (1989)
• [文献書誌] Harabuchi,Y.: "EpsteinーBarr virus in nasa Tーcell lymphomas in patients with lethal midli ne granuloma." Lancet. 335. 128-130 (1990)
• [文献書誌] Osato,T.: "EpsteinーBarr virus infection and oncogenesis:Bーcell disorders,Tーcell malgnancies,and risk factors." Cancer Genetics and Cytogenetics. 39. 15-16 (1989)
• [文献書誌] Osato,T.: "Infection and Oncogenesis by ubiquitous human EpsteinーBarr virus:Uncontrolled lymphoproliferation and risk factors." Oncogenic Herpesviruses. 1-13 (1989)
• [文献書誌] Osato,T.: "EpsteinーBarr virus,Burkitt′s lymphoma,and an African tumorpromoter." Immunobiology and Prohyy laxis of Hunan Herpesvirus Infections.
• [文献書誌] Osato,T.: "Euphobia tirucalli in high risk aresa of Burkitt′s lymphoma in Africa." Comparative Study on Causation and Prevention of Cancer.