研究課題/領域番号 |
01015019
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
横山 茂之 東京大学, 理学部, 助教授 (00159229)
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研究分担者 |
西村 暹 国立がんセンター, 研究所, 部長 (20076970)
武藤 裕 東京大学, 理学部, 助手 (30192769)
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キーワード | がん遺伝子 / cーHaーras遺伝子産物 / GTP / 2次元NMR / 高次構造 / PC12細胞 / アザチロシン / 微量注入 |
研究概要 |
正常型および変異型のヒトcーHaーras遺伝子産物(rasタンパク質)を大腸菌により大量調製し、生理的条件下での高次構造を、2次元核磁気共鳴(2DーNMR)により解析した。プロトンシグナルのアミノ酸残基への帰属には、アミノ酸残基の種別に特異的な重水素化法、隣接するアミノ酸残基間での核オーバーハウザー効果(NOE)を利用する配列特異的帰属法、部位特異変異法などを併用した。GDP結合型rasタンパク質では、Asp38〜Val44とCys51〜Asp57との間で逆平行betaシート構造が形成されていることがわかった。このようなNMR解析の結果は、X線結晶解析によりすでに発表されていた結果とは矛盾したが、本研究とほぼ同時に訂正された新しい結果とは一致した。さらに、GTP結合型rasタンパク質では、この逆平行betaシート構造が、Asp38ーSer39とLeu56ーAsp57の部分で開いていることが明らかになった。このように、GDP→GTP交換に伴い、エフェクター部位に含まれるAsp38〜Tyr40と、Mg^<2+>結合に関与するAspー57において、大きな高次構造変化のあることがわかった。 他方、rasタンパク質の作用を特異的に阻害する薬物の候補として、ras遺伝子によってトランスフォームしたNIH3T3細胞の増殖を特異的に阻害するアザチロシンを取り上げた。活性化rasタンパク質をPC12細胞に微量注入すると神経様突起の形成が誘起されるが、PC12細胞に対するこのような作用が、NIH3T3細胞の場合と同様の濃度のアザチロシンを培地に加えることにより阻害されることを見いだした。アザチロシンのこのような効果は等量のチロシンによっては打ち消されず、アザチロシンがチロシンのアナログとして作用しているのではないことが示唆された。さらに、rasタンパク質とともにアザチロシンを微量注入しても、培地に加えた場合と同様に、阻害効果が表れたので、アザチロシンの標的が、細胞内に存在することがわかった。
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