SV40癌化ヒト線維芽細胞より作製したcDNAライブラリィーの検索によりNobel MHCクラスI抗原をコードすると思れるクローン(PIO)を分離、サンガー法により約90%の核酸配列を決定、他のHLA遺伝子との比較を行った。 (1)既に発表されたクラスI遺伝子のほとんどにおいて、2ケのイニシェーションコドンが報告されているが、p10においては単1のみである。 (2)他のHLAクラスI遺伝子との比較においてalpha1ドメインは80%、alpha2ドメインは81%、alpha3ドメインは93%、トランスメンプランドメインは70%、サイトプラスミックドメインは76%のホモロジーを示した。 (3)Alu反復配列が3末端側非飜訳部分中央にみとめられ、ポリ(A)アデニリレーション部分を提供している事が観察された。 (4)トランスメンブレン部分の疎水結合は良く保れており、p10によりコードされる分子が細胞表面に発現している事が示唆された。 (5)同一細胞より作成したジェノミックライブラリィーよりp10に対応するジェノミッククローンを分離、5末端側の核酸配例を約1kb行った。その結果、従来よく認められるTATAボックス部分の核酸配例がTCTAAAであり、AがCに変換している事が認められた。 (6)p10を種々の培養ヒト癌細胞株(ヒト胃癌細胞、ヒトメラノーマ、ヒト子宮頚癌、ヒトBリンパ腫、ヒト肺癌細胞)に遺伝子導入を行ったところ、全ての細胞において発現が認められた。特にBリンパ腫細胞において高度の発現が観察され、組織特異性の存在する事が示唆された。
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