放射性同位元素、抗癌剤、毒素を結合したモノクローナル抗体を生体内投与することによる癌の診断、治療への応用に関する基礎的知見を得ることを目的として、放射性同位元素で標識したモノクローナル抗体を用いて、癌細胞表面に存在する腫瘍連抗原や癌遺伝子産物がインビボでどのように発現しているかを、ヌードマウスに移植したヒト癌細胞を用いて定量的に解析した。ヨード(I)ー131、インディウム(In)ー111標識抗体を癌細胞を移植したヌードマウスに投与したところ、時間の経過とともに、より強く移植した大腸癌腫瘍に集積するのに対し、正常組識にはほとんど取り込まれない。MIRD法による計算では大量のIー131標識モノクローナル抗体を繰り返し投与することにより、動物実験では理論的には放射線感受性に高い腫瘍の治療が可能である。Iー131およびInー111標識しcーerbー2癌遺伝子産物に対する抗体SV2ー61gammaはcーerbBー2を発現する細胞を移植したヌードマウス腫瘍に集積し、癌遺伝子の体内分布を画像化することができる。 大腸癌患者における臨床的検討では、動物実験での結果に比べて腫瘍への集積率および腫瘍/正常組織比が低く、治療に十分な放射線吸収を得るのは困難であった。 新しいモノクローナル抗体、抗体との結合に用いるキレート剤の開発および用いる放射性同位元素など腫瘍/正常組織化を高める幅広い研究が欠かせない。
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