研究概要 |
大量生産の系が確立している大腸菌由来の3ーメチルアデニンDNAグリコシラーゼII(alkA遺伝子産物)を対象としたが、本酵素は、alkA遺伝子を組込んだプラスミドをもつ大腸菌から純度よく分離・精製した。結晶化は、蒸気平衡法を用い、沈澱剤、温度、緩衝溶液等の条件を検討したところ、沈澱剤としてポリエチレングリコール6000を含むTris緩衝溶液(pH8.5、10℃)から板状結晶(3.5×0.5×0,2mm)が得られた。結晶学的データは、強力X線発生装置(40KV、250mA)を用いたプレセッション写真と自動四軸型X線回折計データから、単斜晶系、空間群:C2、格子定数:a=56.8〓,b=76.8〓、c=62.2〓、beta=110.3°と決定した。非対称単位に1分子存在すると仮定すると、Vm=2.1〓/daltonという妥当な値を示し、静止写真から2.7〓以上の分解能をもつことがわかったので、この結晶はX線構造解析に適しているといえる。次に自動四軸型X線回折計で2個の単結晶を用いて3.2〓分解能までの7235反射のX線回折強度データを測定し、損傷と吸収の補正後、スケーリング、平均化を行ない、独立な2667反射データを得た。結晶間や対称で関係づけられる反射データの一致度を示す指標RmとRs値が、それぞれ0.04と0.05であったことは、X線強度として妥当なデータを得たものと考える。本酵素の場合、重原子同型置換法によるX線構造解析を行なう必要があるので、種々の重原子誘導体結晶の調製を行なったが、いまだに良好な重原子誘導体結晶は得られていないが、引続き探索を進める予定である。なお、本酵素の溶液学的性質については、円偏光二色性(CD)スペクトルをもとに、二次構造の含量を推定してみたところ、alphaーヘリックス:35%、betaー構造:16%であることが示され、これはアミノ酸配列からの予測とよく一致している。
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