我々はこれまでにcellーfree HIV感染についてはMTー4細胞系、cell to cell感染についてはMOLTー4細胞を利用した混合培養系を確立しこれを利用して抗HIV薬の開発を目指している。今年度もこれらのシステムを利用して多数の天然または合成物質(核酸誘導体、抗生物質、サポニン、ビタミン、色素、多糖体など)の抗HIV活性をスクリーニングし、以下の有効な物質とそれに付随する現象を見いだした。1)HIVのtRNAプライマー結合部位とスプライスアクセプター部位に対するアンチセンス合成オリゴRNAが効果的にHIVの増殖を抑制した。オリゴマーのサイズとphosphorothioate構造が重要であった。2)PradimicinAの抗HIV効果はHIVgp120のマンノースとの結合を介していることが強く示唆された。また、Caイオンが必要であることが分かった。3)腫瘍壊死因子(TNF)がHIV感染細胞に働いてウイルス増殖を促進すると共にこれを選択的に殺すことを見いだした。このことより、AZTなどの抗HIV薬と併用するという新しいエイズ治療法の可能性が示唆された。4)一つのHIVストレインによる細胞融合を抑える薬剤(i.e.デキストラン硫酸、LEM)は他のストレインも有効なことを示した。またこれらの薬剤はHTLVーIによる細胞融合も抑制した。ATLの治療にも応用可能かも知れない。 反省点としては、計画していたフレンドネコ白血病の発症システムを用いての上記有効物質のin vivo実験が出来なかったことがあげられる。
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