1.抗RAF抗体:大腸菌で発現させ、精製したcーRAF蛋白の一部(31kd)を抗原として、抗RAFマウスモノクローナル抗体を作成した。得られた14種の抗体は免疫ブロットや免疫沈降の結果から少なくとも4種のエピトープ認識群に分類できた。細胞分画と免疫ブロットにより、正常cーRAF蛋白(74kd)はほとんど可溶性分画に分布するのに対し、融合型活性RAF蛋白は圧倒的に膜分画に局在することが判明した。また、最も特異的な抗体を用いて、主に核分画に局在する新しいRAF関連蛋白(56kd)を見出した。これらの抗体を用いることにより、cーRAF蛋白と相互作用をする蛋白の同定、cーRAF蛋白のキナーゼ活性の変化やリン酸化による活性調節を追求する道が開かれた。 2.活性ras経路で発現の変化するcDNA:ホルモンによるras条件形質転換の系において、活性ras発現開始後の5時間で発現が上昇するcDNAクローン4種、減少するクローン1種を分離した。これらはいずれも比較的コピー数の多いmRNAに対応しているので、構造蛋白の遺伝子産物と思われる。 3.cDNA発現ライブラリー:染色体DNAの移入による遺伝子の検索は、約70キロ塩基対までの遺伝子に限定されていた。そこで高能率のcDNAライブラリー構築と高発現を同時に満たす新しいlambdaファージベクターを開発した。これは13kbpまでのcDNAを強力な真核生物プロモーターの下流に挿入でき、しかもベクター単独では増殖できないという特長がある。更にベクター内にハイグロマイシン耐性マーカーを組込んであるため、DNA移入細胞を選抜することができる。この系による新しい遺伝子の検索を今後推進したい。 4.その他:ハイグロマイシン耐性遺伝子との共移入によって、ヒト胃癌、肝癌、リンパ腫などからrasと異なる活性トランスフォーミング遺伝子を少なくとも3例検出した。それらのクローニングと実体の解明を開始する。
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