研究課題/領域番号 |
01015100
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研究機関 | 北里大学 |
研究代表者 |
井村 伸正 北里大学, 薬学部, 教授 (70012606)
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研究分担者 |
姫野 誠一郎 北里大学, 薬学部, 助手 (20181117)
瀬子 義行 北里大学, 薬学部, 講師 (60133360)
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キーワード | 制癌剤 / 放射線療法 / 副作用軽減 / 耐性 / メタロチオネイン / ビスマス |
研究概要 |
我々は金属結合蛋白質メタロチオネイン(MT)がシスプラチン、アドリアマイシン、シクロフォスファミドなど作用機作の異なる数種の制癌剤および放射線の細胞毒性を軽減することを見いだし報告した。今年度はまず、放射線障害軽減機構について検討し、MT合成誘導剤の前投与によって骨髄中で増加したMTが放射線照射によって生じるフリーラジカルを除去して骨髄を保護する可能性が示唆された。また、我々はすでにMT合成誘導剤の1種であるビスマス化合物をマウスに前投与することによって、上述した制癌剤や放射線の抗腫瘍作用を損うことなく副作用のみを効率良く軽減できることを報告したが、これはビスマスが正常組織中でのみMTの合成を誘導し、腫瘍組織中のMT濃度には影響しないためと考えられる。そこで3種のマウス由来癌細胞をそれぞれ皮下移植したマウスを用いてこの可能性を検討し、ビスマスがこれら癌細胞中にMTをほとんど誘導合成しないことが確かめられた。一方、ビスマスとは異なり、腫瘍組織中でもMTを誘導合成する亜鉛を担がんマウスに前投与した場合にはシスプラチン、ブレオマイシン、アドリアマイシン、シクロフォスファミドなどの骨髄毒性のみならず抗腫瘍作用も著しく抑制された。なお、この実験条件下においても、ビスマス化合物はこれら制癌剤の抗腫瘍効果に影響を与えることなく骨髄毒性を顕著に軽減した。この結果から、癌細胞中のMT濃度の上昇は、その癌細胞に複数の制癌剤に対する抵抗性を与えると考えられ、耐性獲得因子の1つとしてMTが重要である可能性が示唆された。また、別の検討によってこれら制癌剤自身も比較的強いMT誘導能を有し、癌組織中のMT濃度を有意に上昇させることが判明した。この事実は、制癌剤の投与によって癌細胞が制癌剤に対する耐性を獲得する可能性を示しており、癌化学療法における重大な課題となろう。
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