ILー2受容体beta鎖の構造と機能の解析

1989 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 01015131
• 研究機関: (財)東京都臨床医学総合研究所
• 研究代表者: 通堂 満 東京都臨床医学総合研究所, 免疫研究部門, 研究員 (40197645)
• 研究分担者: 佐藤 功栄 東京都臨床医学総合研究所, 免疫研究部門, 研究員 (40124458) ; 北村 ふじ子 東京都臨床医学総合研究所, 免疫研究部門, 研究員 (90124453)
• キーワード: ILー2 / ILー2受容体 / cDNA

研究概要

ILー2はT細胞の分化増殖に必須の役割をもつとともにNK細胞に働いて癌細胞殺傷能力のあるLAK細胞に分化させる。このILー2はリンパ球表面に存在する特異的ILー2受容体を介してその作用を発揮するが、ILー2受容体はよく知られているalpha鎖と新しく発見されたbeta鎖の少なくとも2つのサブユニットから構成されている。我々はこのヒトbeta鎖に対するモノクローナル抗体を作製し、これを用いてbeta鎖の性状を解析するとともにbeta鎖をコードするcDNAを単離し、beta鎖の全構造を決定した。
〔1〕beta鎖の生化学的性状と発現分布:抗beta鎖抗体(Mikーbeta1)による免疫沈降実験によりbeta鎖は分子量70、000の単一の蛋白として同定された。alpha鎖と異なりbeta鎖は非刺激末梢血リンパ球の10〜20%に恒常的に発現されており、その主な分画はNK細胞であることが示された。
〔2〕beta鎖cDNAのクローニング:cDNA直接発現法(Seed)とMikーbeta1抗体によるスクリーニングによりbeta鎖をコードする4kbのcDNAが単離された。これによりbeta鎖は525個のアミノ酸からなる膜貫通型蛋白で、alpha鎖と異なり細胞質内が非常に大きい(アミノ酸286個)ことが示された。また、beta鎖はエリスロポエチン、ILー3、ILー4、ILー6などの各受容体と類似構造をもち1つの受容体ファミリーを形成することが明かとなった。
〔3〕遺伝子発現実験によるILー2受容体の解析:beta鎖cDNAをヒトT細胞株に導入し、beta鎖がILー2のシグナル伝達をになうことを明らかにした。また、ヒトILー2受容体alpha鎖cDNAおよびbeta鎖cDNAを同時にマウス線維芽細胞に導入し、高親和性ILー2受容体を細胞膜上に再構成させることに成功し、ILー2受容体が少なくともalpha鎖とbeta鎖のサブユニットからなることを断定的に明らかにした。

研究成果

• [文献書誌] M.Hatakeyama: "Interleukinー2 receptor beta chain gene:generation of three receptor forms by cloned human alpha and beta chain cDNA′s" Science. 244. 551-556 (1989)
• [文献書誌] M.Tsudo: "Reconstitution of a functional ILー2 receptor by the betaーchain cDNA A newly acquired receptor transduces negative signal" J.Immunol.143. 4039-4043 (1989)
• [文献書誌] T.Kono: "Murine interleukin 2 receptor beta chain:Dysregulated gene expression in lymphoma line ELー4 caused by a promotor insertion" Proc.Natl.Acad.Sci.USA. 87. 1806-1810 (1990)
• [文献書誌] 通堂満: "インターロイキン2 レセプター" 生化学. 61. 601-605 (1989)
• [文献書誌] 通堂満: "ILー2 レセプター" 臨床免疫. 21. 1677-1685 (1989)
• [文献書誌] 通堂満: "ILー2 レセプター研究の動向ーニューレセプターファミリー?ー" 免疫薬理. 8. 111-114 (1990)
• [文献書誌] 通堂満: "新生化学実験講座 第7巻 増殖因子とその受容体" 東京化学同人,