研究課題
昨年度のFestningen地域の調査に引き続き、今年度はSkansbuktaおよびTrygghamnaの両地域において野外調査を行った。現在採集してきた岩石および化石標本について室内研究を続行中であるが、得られた成果および新知見につき概要を報告する。1.Skansbukta地域 (1) 当地域の調査で特筆されるのは、石炭一ペルム系境界について新知見が得られたことである。従来、北極域における当境界に関する研究はほとんど行われていないので、貴重な貢献になることは疑いない。境界の判定に有効な紡錘虫・小型有孔虫の保存良好な標本が多数体採集され、沖村・猪郷を中心に、詳細な室内研究が進行中である。 (2) 一方、本地域に露出するペルム系Kapp Starostin層の発達状況は、Festningen地域の同層と比較して悪い。層厚は約250mと薄く、石灰岩層、化石帯の発達状況も劣る。これは両地域の同層の堆積環境の違いを反映しているものと考えられ、比較研究が進めば、古地理的観点からも、種々の興味深い事実が明らかになるであろう。2.Trgghamna地域。昨年調査したFestningen地域からIsfjordを狭んで16km離れた対岸に位置する。ここでの調査主目的は、Kapp Starostin層の水平変化の状況把握とペルム一三畳系境界の調査であった。 (1) 両地域のKapp Starostin層は、厚さ、岩相・化石帯の3点についてほとんど変化が認められず、堆積環境のほぼ等しい状態が2・3千万年続いていたことが推測される。しかし、Festningen地域で認められた最上部腕足類化石帯がここでは欠除しており、生物の生息環境が後期に多少異っていた可能性がある。 (2) 当地域では三畳系の基底近くから多くのアンモナイト化石が採集されたので、ペルム一三畳系境界に存在する堆積間障の時間がより詳細に把握されねることが期待できる。
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