研究課題/領域番号 |
01041013
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研究種目 |
国際学術研究
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 学術調査 |
研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
新藤 静夫 千葉大学, 理学部, 教授 (70058014)
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研究分担者 |
KONGOLA L.R. タンザニア水資源省, 地下水局, 研究官
近藤 昭彦 東京都立大学, 理学部, 助手 (30201495)
佐藤 芳徳 上越教育大学, 学校教育部, 助教授 (40143185)
佐倉 保夫 千葉大学, 理学部, 助教授 (70153947)
松本 栄次 筑波大学, 地球科学系, 助教授 (10015571)
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研究期間 (年度) |
1989 – 1991
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キーワード | タンザニア / 地下水涵養 / 半乾燥地域 / 地下水の利用 / 地下水の枯渇 / 浸透機構 / 放射性同位体 / 安定同位体 |
研究概要 |
本年度は、研究計画の最終年に当たり、今までの研究の総括を行う。具体的には、平成元年度より平成3年度まで、3年度に渡って毎年出版してきた英文報告書をとりまとめて、研究成果のまとめを最終報告書として出版する。 タンザニアの新しい首都であるドドマの水道水源として利用されている、ドドマ北方30kmのマクタポ-ラ盆地の地下水を対象として、地下水涵養量の推定のため各種の調査を実施してきた。年間の降水量が500mm程度の半乾燥地域では、地下水の揚水量が補給量を上回ると、直ちに地下水の枯渇を招く。地下水の枯渇を防止しつつ、地下水の利用を行うためには、地下水の涵養量(補給量)に対応した揚水を行うことが必要になる。そのためには、涵養量を推定するとともに、降雨が地下水に変換される降雨浸透過程の地中水の移動機構、すなわち地下水の涵養機構をも把握しなければならない。このような観点から、マクタポ-ラ盆地周辺部から盆地へ流入する河川水(地表水)および地下水の流量を測定するため各種の測定器を配置し、それらのデ-タ収集に務めてきた。その他、盆地周辺の地形や地質などの調査、地下水の一般水質や放射性同位体(トリチウム)、安定同位体(水素と酸素)の分析、浸透能試験、土砂生産や移動の測定、人工降雨による現場やライシメ-タによる浸透過程の追跡などを行ってきた。 以上の現地での観測や調査に加えて、帰国後の研究室においては、現地で収集したデ-タの検証と現象の理解のため、コンピュ-タを用いた水収支シミュレ-ションや地下水流動のシミュレ-ション、人工衛星(ランドサット)のMSSデ-タに基づく雨期ー乾期の植生変化の解析などを行ってきた。 これらの研究成果の概要は、いかのようになる。 1.本研究の対象地域であるマクタポ-ラ盆地の地下水涵養は、広域地下水流動系のもとで生じる成分と、局地流動系のもとで生じる成分の2つに明瞭に区分される。広域流動系とは、盆地北方のチェネネ山地に降った雨水を起源とする、滞留時間の長い地下水であり、一方、局地流動系とは、盆地に近い南西方などに見られる上部平原で浸透する雨水を起源とする、滞留時間の短い地下水である。 2.後者の局地流動系による地下水涵養量は、水収支シミュレ-ションの計算によれば、降雨量の15ー20%程度となる。 3.トリチウム濃度から推定されるこの地域の地下水の滞留時間は、盆地の深層被圧地下水で数十年程度、浅層地下水で数年から20年程度であり、被圧地下水は盆地から数km以内で涵養された、比較的循環の早い地下水であるといえる。 4.ライシメ-タにおける土壌水分の観測や、人工降雨実験による現場の浸潤前線の進行状況から、当地のような乾燥地域での浸透機構が次のように明らかになってきた。雨期の始めの浸透は、部分的あるいは選択的に進行する。その後、土壌が充分湿るようになると、全体に一様に浸透が進む傾向が認められた。この現象は、実験室におけるカラム実験では、部分流あるいは"フィンガ-リング"としてある特殊な条件のもとでの、土粒子と水と空気の三相がおりなす界面現象として知られているが、乾燥地域でも相当な涵養を可能にする機構として注目される。すなわち、乾燥地域では潜在蒸発散量は降雨量の数倍あるため、蒸発を免れて地下水を涵養するためには、流れ易い経路を速やかに降下することが必要となる。 5.マクタポ-ラ盆地では、浸透性の良い土壌に覆われた上部平原で地下水涵養が生じており、この上部平原と北方のチェネネ丘陵からの二系統の地下水が集まる、水文地質学的に優れた特性を持っていることが明らかとなった。
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