研究課題/領域番号 |
01041016
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
赤澤 威 東京大学, 総合研究資料館, 助教授 (70013753)
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研究分担者 |
MUHESEN Sult ダマスカス大学, 文学部, 講師
ABDULSALAN A ダマスカス大学, 理学部, 教授
阿部 祥人 慶応義塾大学, 文学部, 助教授 (90175919)
南川 雅男 三菱化成生命科学研究所, 研究員
百々 幸雄 札幌医科大学, 教授 (50000146)
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キーワード | ネアンデルタ-ル / 進化 / 中期旧石器 / 地溝帯 / シリア / アフリン / デデリエ |
研究概要 |
平成2年度の研究(調査)成果のうち、特筆すべきは次の2点である。 1.ネアンデルタ-ル人骨の発掘 当人骨は、そのサイズから生後約3ヶ月の幼児の左上腕骨である。このような幼児骨の場合、その形態学的特徴からネアンデルタ-ル人と同定することは不可能である。しかし、当人骨は西アジア地域のネアンデルタ-ル人が製作したレバント・ムステリアンと総称される中期旧石器と一緒に発見されたという事実から、ネアンデルタ-ル人の幼児骨であると想定される。 この発見は、シリアにおけるネアンデルタ-ル人の生息を、人骨の側から裏付ける最初の証拠となった。 2.レバント・ムステリアン石器の発見 上記人骨とともに、西アジアネアンデルタ-ル人類が考案した固有の旧石器レバント・ムステリアン石器が発見された。すなわち,ネアンデルタ-ル人骨と彼らの生活行動を具体的に示す石器とが、シリアにおいて初めて一緒に発見されたことになる。 以上の結果から、当洞窟は当初の予測どおり、ネアンデルタ-ル人類遺跡であることが確認された。すなわち、当洞窟は大地溝帯北端部におけるネアンデルタ-ル人類遺跡として記載された最初の遺跡となった。また、発見された人骨はシリアにおけるネアンデルタ-ル人生息の最初の証拠となり、当洞窟がアラビア地溝帯を中心としたヒトの進化、現生人類の出現とそのユ-ラシア大陸各地への拡散現象の問題を解明する上で重要な知見を提供する可能性が高いことが証明された。
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