インダス文明期の栽培作物とその消長に関する調査研究

1991 年度 研究成果報告書概要

• 研究課題/領域番号: 01041041
• 研究種目: 国際学術研究
• 配分区分: 補助金
• 応募区分: 学術調査
• 研究機関: 信州大学
• 研究代表者: 俣野 敏子 信州大学, 農学部, 教授 (00021080)
• 研究分担者: MAJEED Abdul 気象庁, 洪水予知センター, センター長 ; DURRANI F.A. ペシャワール大学, 教授 ; MUGHAL M.R. 考古学庁, 北部地域研究所, 所長 ; KHAN A.Navi ハ゜キスタン考古学庁, 総部長 ; 山北 聡 宮崎大学, 教育学部, 助教授 (80210342) ; 佐々木 章 大分短期大学, 助教授 (60105210) ; 辻 誠一郎 大阪市立大学, 理学部, 助教授 (20137186) ; 宮崎 敏孝 信州大学, 農学部, 助教授 (50021077) ; 藤原 宏志 宮崎大学, 農学部, 教授 (40040860) ; 山中 三男 高知大学, 理学部, 教授 (50004461) ; 氏原 暉男 信州大学, 農学部, 教授 (60021060) ; NABIKHAN A. Archaeological Department Pakistan
• 研究期間 (年度): 1989 – 1991
• キーワード: インダス文明 / 栽培作物 / 植物遺体 / プラントオパ-ル分析 / イネ / 乾燥地農業 / プレ-トテクトニクス / 塩害

研究概要

ユ-ラシア大陸南部における栽培植物の東西交流に関する歴史的変遷の解明を主な目的として実施したもので、特に、東アジア起源野主要栽培植物の西方への伝播の時代や経路を現世の作物の諸形質の地理的変異、耕地の利用形態、自然条件の解析及び土壌堆積物中の微化石の分析により過去のあるいは自然植生の復元などの観点から推論しようとした。
インダス川流域のモヘンジョダロ、ハラッパを中心としたインダス文明期の遺跡から作物遺体分析のための試料を収集した。また、共同研究者Mukahl氏の発掘になるがガ-ルハクラ、チョリスタン遺跡に係わる試料についても提供を受け、さらに米国及びイタリアの研究者からハラッパと北部地域の発掘試料の分譲を受けた。これらの試料は現在分析中で、イネ、シコクビエの存在が確認されており、従来冬作物の小麦がインダス分明期の栽培作物とされていたことに対して新しい知見をもたらすことになろう。
インダス文明は約千年の隆盛の後急速に衰退したが、その衰退の要因をア-リア人侵攻の前にすでに文明を支えるための生産力が低下していたと考えられる。その生産力の低下の要因として、遺跡上に堆積している土砂の由来から、土石流による物理的な破壊が想定されるが、その他に、塩害、河川流路の変化による乾燥など多様な要因の総合と推定されるに至った。それらに関してはかなり多くの試料・資料収集をしてきており、分析方法を検討中せある。それらに関して一つは河川争奪の観点から衛星写真、航空写真を解析中である。また、塩害と作物栽培の関係については現在の耕地状況下らも推定可能であるので、耕地や河川流水の塩類濃度を調査した。また、地形、母岩等についても調査した。
遺跡収集試料の分析結果の一部についてはパキスタンの共同研究者との共同執筆としてはすでにパキスタン考古学局への報告書として提出しており、国際誌へも投稿予定で準備を進めている。
また、本研究に付随する潅漑方式については日本熱帯農業学会に投稿準備がほぼ完了し、塩害、森林と林業等、現在農業に関する問題については日本南アジア学会その他に投稿の予定である。
さらに、これまでに対象国と周辺地域から収集してきた資料、あるいは日本国内において新しく収集した資料を整理し約250頁の資料集を作成中であり、近代科学を駆使した研究の不足する相手国への還元を意図するもので、その内容を大別すると次のとおりである。(1)現植性・古植生(2)現地形・地質、古地形・古地質(3)発掘植物遺体(4)乾燥地農業の諸問題(5)その他
なお、パキスタンでは山岳地帯の土石流による災害は、山岳民族の生命と生活の不安定の要因であることはもちろん、広くインダス川流域全体の政治・経済の不安定さをもたらしているものである。また、潅漑方法の不備は湛水と塩害による農業生産力の低をもたらしている。本研究に付随するこれらに関する調査は、パキスタンの農林業に大きく寄与しうるものと信じている。
本研究の3年間を通じて、パキスタン国内の政情不安定と湾岸戦争の影響でなど、渡航の延期・短縮を余儀なくされたり、調査地域が制限されたりした場合もあったため、必ずしも目的の試料収集が不完全な部分もあった。ことに問題であったのはシンド州北部インダス川流域の遺跡に関する調査・試料収集であり、シンジ州についてはパキスタン国内でも最も危険な地域として政府の許可が得られず、実施出来なかった。しかし、この地域は本研究にとって最も重要な意味をもつ地域である。一応本年度で終了する事になっているが、幸いにも考古学局の調査許可は継続しているので、実質的な調査は継続する予定である。

研究成果

• [文献書誌] FUJIWARA Hiroshi: "Application of plant-opal analysis to archeological survey of agricultural sites." Modern Trends of Plant Science in Pakistan. 3. 259-261 (1987)
  • 説明: 「研究成果報告書概要(和文)」より
• [文献書誌] 藤原 宏志: "先史時代水田の区画規模決定要因に関する検討" 考古学と自然科学. 21. 23-33 (1989)
  • 説明: 「研究成果報告書概要(和文)」より
• [文献書誌] 俣野 敏子: "パキスタンにおける作付け体系と水管理システム" 環境科学年報ー信州大学ー. 12. 65-69 (1990)
  • 説明: 「研究成果報告書概要(和文)」より
• [文献書誌] FUJIWARA Hiroshi: "Rice and Ragi at Harappa;Prelimimary results by plant opal analysis" PAKISTAN ARCAEOLOGY. 19. (1991)
  • 説明: 「研究成果報告書概要(和文)」より
• [文献書誌] 佐々木 章: "パキスタンにおける潅漑様式の種類と分布" 熱帯農業.
  • 説明: 「研究成果報告書概要(和文)」より
• [文献書誌] 俣野 敏子: "パキスタンにおける塩害の実態とその成因" 熱帯農業.
  • 説明: 「研究成果報告書概要(和文)」より
• [文献書誌] 俣野 敏子: "アジア・畑作技術指導マニュアル(パキスタンの畑作の章)" 全国農業改良普及協会,
  • 説明: 「研究成果報告書概要(和文)」より
• [文献書誌] FUJIWARA, Hiroshi et al: "Application of Plant-opal analysis to Archaeological Survey of agricultural sites." Modern Trends of Plant Science. 3. 259-261 (1987)
  • 説明: 「研究成果報告書概要(欧文)」より
• [文献書誌] FUJIWARA, Hiroshi: "Study on the Factors in Determining the Size of Prehistric Paddy Field" Archaeology and Natural Science. 21. 23-33 (1989)
  • 説明: 「研究成果報告書概要(欧文)」より
• [文献書誌] MATANO, Toshihiko et al: "Cropping Pattern in Pakistan with Special Reference to Water Management." Annals of Environmental Science Shinsyu University. 12. 65-69 (1990)
  • 説明: 「研究成果報告書概要(欧文)」より
• [文献書誌] FUJIWAWA, Hiroshi et al: "Rice and Ragi at Harappa ; Preliminary results by Plant-opal analysis" Pakistan Archaeology. 19. (1991)
  • 説明: 「研究成果報告書概要(欧文)」より
• [文献書誌] SASAKI, Akira et al: "Irrigation System in Pakistan" Japanese Journal of Tropical Agriculture. (1992)
  • 説明: 「研究成果報告書概要(欧文)」より
• [文献書誌] MATANO, Toshiko: Zenkoku Nougyou Fukyu Kyoukai. Dry Field Firming in pakistan, (1992)
  • 説明: 「研究成果報告書概要(欧文)」より