研究課題/領域番号 |
01041063
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研究種目 |
国際学術研究
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 島根大学 |
研究代表者 |
徳岡 隆夫 島根大学, 理学部, 教授 (30025358)
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研究分担者 |
酒井 治孝 九州大学, 教養部, 助教授 (90183045)
林 大五郎 琉球大学, 理学部, 助手 (30112444)
在田 一則 北海道大学, 理学部, 助手 (30091408)
久富 邦彦 和歌山大学, 教育学部, 助教授 (30165104)
高安 克巳 島根大学, 理学部, 助教授 (00127490)
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研究期間 (年度) |
1989
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キーワード | ヒマラヤの地質 / テ-チス海 / シワリク層 / ミッドランド帯 / ラ-マピテクス / コリジョンテクトニクス / 石油開発 |
研究概要 |
昭和63年度に引き続いてネパ-ルトリブバン大学地質学教室の協力を得て以下の3つの課題のもとに調査を実施した。 1.ヒマラヤ前縁シワリク帯、中央西部のチュリア層の層位・古生物・構造地質学的研究:徳岡・高安・久富がトリブバン大学3名のスタッフと、ビナイ〜テイナウ河間の調査を行った。アルン河流域で確立されたシワリク層の層序は本地域でも適用され、シワリク帯が2分され、北帯はより古い時代の、南帯はより若い時代の地層を含む。今回の調査でテイナウ河までの地域が明らかになったことから、ラ-マピテクス層準がアルンコラ層上部(10Ma)であることが確認された。また大型哺乳動物化石数地点を含めて貝・大型植物・花粉化石についての資料が蓄積された。堆積学的な検討からはシワリク層の堆積がヒマラヤの上昇を直接反映していることが明らかにされ、下部層の蛇行河川から上部層の山麓堆積に至る一連の河川系の変遷が解明された。シワリク層の堆積はインドプレ-トのユ-ラシアへの衝突によってもたらされたものであるが、その実体がこの2年間の研究で明らかにされたことは重要な成果である。すなわちシワリク層は南北2帯の帯状分布をなし、層序的のみならず構造的にも北から南へと若くなる極性を有している。さらにシワリク前縁のFCT(ヒマラヤ前縁断層)が確認されたこともネオテクトニクスの観点から重要で、この実態解明は次年度の中心テ-マとなる。ネパ-ルおよびインドでの石油開発のためにガンジス平野下に海成古第三系が存在するか否かが大問題となっているが、上述の極性から判断すると伏在するシワリク層下に存在する可能性は高く、また低ヒマラヤ帯の海成古第三系の岩相は浅海〜深海相を示すことからもこの予測は支持される。石油開発のための基本的な指針を与えるという点では、テ-チス海の消滅がどのようにして起こったかを解明することが重要であり、今度本調査グル-プがこの点で貢献する見通しが得られた。 2.低ヒマラヤ帯:酒井が協力者のDr.Upretiとともに中央部タンセン地域の南東および北西地域の調査を行い、地質図作成のために必要な調査を実施した。目的はPalpaクリッペ下底のメランジュの構造の形成過程、Bari Gad断層の性状、Naudanda珪岩とKunch層の層位関係の解明の3点である。タンセン地域の地質についてはこの10年来の酒井による調査で概略が明らかにされていたが、今回の調査によりタンセンからカリガンダキ河に至るトラバ-スル-トについての詳細な地質図が完成された。Bari Gad断層は右横ズレの活断層であり、断層地形にも明らかだが、主断層とそれに並走する多数の副断層を伴い、幅広い断層帯をなしていることが解明された。今後ヒマラヤのテクトニクスを論ずる上で意義深い。 3.高ヒマラヤ帯:在田・林が協力者のDr.Sharmaとともにカリガンダキ河からポカラに至るミッドランド帯を調査し、層序・構造の検討を行った。その結果、既知のPhalebas Thrustの北方にもう1つの衝上断層が存在することが明らかになった。従ってミッドランド帯には少なくとも2つの大規模な衝上断層が存在し、これらはヒマラヤのテクトニクスを考える上で重要な意義を持つ。ミッドランド帯中のマントル由来の火成岩(Aulis Basaltほか)については、上述地域での資料採取がなされ、その組成、形成年代の検討が進行中である。本研究グル-プとトリブバン大学地質学教室は前年度に引き続き、ネパ-ル地質学会の協力を得て第2回ヒマラヤジオダイナミックスの討論会を行い、ヒマラヤの地質全体像の解明に貢献した。これに関係して合同地質巡検が中国国境に至るKodari-Charikot地域で行われ、ネパ-ル地質鉱山局をはじめネパ-ル側研究者との間でヒマラヤの地質研究の問題点を相互に討論し、深めることができた。またシワリク帯ではトリブバン大学の院生・学生も参加した巡検が行われ、今後同大学側でも独自に研究が進展する見通しが得られつつある。2年間の継続研究によりトラバ-スル-ト全体をカバ-した総合的な研究展望が開かれてきた。今年度の成果のまとめはトリブバン大学紀要(1990)に発表される。
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