研究課題
ブリラム県サトゥク郡バンドンプロンにある製鉄遺跡の発掘を行ない、初めて先史時代の製鉄の実態を明らかにした。マウンド西側斜面裾部に南北5m、東西16mの主発掘区を設定して発掘した。その結果、3時期にわたり、製鉄に関連する炉17基、製鉄関連塵芥廃棄穴1基、建築遺構1基を検出した。粘土製のフイゴ羽口の破片、粘土壁破片、炭化木材、土器片、大量の鉄滓、工人の食料であったと推定される大形動物骨なども出土した。また、製鉄遺構よりも下層から埋葬人骨6体が出土した。さらに試掘区から、建築遺構と考えられる粘土床と壁が、その下層より嬰児埋葬人骨が1体出土。炉はいずれも円筒形のシャフト炉であり、フイゴによる送風によっていた。炉の構造には2種があり、(1)円筒形炉本体と羽口取付部および排滓口からなるもの、(2)円筒形炉本体と羽口取付部とからなるものの異なった型式がある。両者は同一時期に共存していることから、型式の差は作業の差によるものであり、(1)は製鉄炉、(2)は精錬炉であろう。炉底にはいずれも残留滓があり、なかには粒状ラテライトを留めたものもあって、鉄原料が当地方に無尽蔵にあるラテライトであった可能性を示唆した。第一次調査の成果である土器編年と放射性炭素年代とにより、バンドンプロン製鉄遺跡の年代は紀元前2世紀より古いことが明かにできた。これにより、東北タイに古くから製鉄業が栄えていたことが明かとなり、本研究の仮説の一端が証明できた。次年度のノントウンピ-ポン製塩遺跡の調査成果を待って、東北タイの製鉄と製塩という二大古代産業のもった歴史的意義が解明され、東北タイの真の歴史像が描けることであろう。
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