研究課題/領域番号 |
01041081
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研究種目 |
国際学術研究
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 学術調査 |
研究機関 | 慶応義塾大学 |
研究代表者 |
近森 正 慶応義塾大学, 文学部, 教授 (80051390)
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研究分担者 |
TONY Utanga クック諸島政府資源保護局, 主任
STURT Kingan クック諸島政府科学調査局, 技官
岡嶋 格 東横学園女子短期大学, 助教授 (70123073)
吉田 俊爾 聖マリアンナ医科大学, 解剖学教室, 専任講師 (70081627)
KINGAN Sturt Scientific Research Officer, Government of the Cook Islands.
UTANGA Tony Secretary of Internal Affairs and Acting Director of Conservation, Government of
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研究期間 (年度) |
1989 – 1991
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キーワード | 文化財の保存・復元 / 現地協力 / 考古学的調査 / クック諸島 / ポリネシア文化 / サンゴ礁 / マラエ / 居住遺跡 |
研究概要 |
現地政府・住民との協力および還元:本研究は、クック諸島政府の「文化遺産の保護と活用」を目標とする要請によって計画された。その目的とするところは、消滅の危機にある先史遺跡を記録し、人類的あるいは民族的遺産を継承するための基礎的調査研究をおこなうことである。その成果は、現地政府によって今後の文化財保護行政に役立てられることとなる。19世紀以来、西欧文明の怒涛に洗われ、文化的自己喪失を体験した島民たちにとって、自らの歴史の再発見こそが自己認識の唯一の手がかりを与える。我々の調査研究が、学問的成果を産むのみならず、現地住民の生活に還元されることが期待される由縁である。 予備調査および初年度の調査については、すでに概要を出版して公表したが、初年度は今までの成果を現地、とりわけ我々の調査に協力してくれた島の住民に理解を与えるべく、社会教育的目的をもった小冊子“Te Mata:Looking at the Past.(眼:過去を見つめる)"(45ペ-ジ)を作成、配布して、たいへん好評を得た。知識、情報を現地還元については、大いに努力を払うことにしている。 調査概要:1985年におこなったラロトンガ島、マンガイア島、アイトゥタキ島、プカプカ島の予備調査の成果にもとづいて、1989年度から1991年度にかけて、ラロトンガ島、トンガレヴァ(ペンリン)島、マニヒキ島、ラカハンガ島などにおいて集中的な発掘調査をおこない、充分に満足すべき結果を得た。 ラロトンガ島〜クック諸島の行政の中心として発展したラロトンガ島は今日、道路の建設、農地の拡大などによって埋蔵文化財の破壊がいちじるしい。初年度に我々は、アヴァナ川の流域を中心に広範な探査をおこない、遺跡の分布を把握したが、それにもとづいて第2年次には、ガタンギア地区の居住遺跡と祭祀遺跡(マラエ)の発掘調査を実施した。マラエの多くは、農耕適地に立地しているために破損が進行している。マラエの基部を発掘して原形を確認し、立地基盤であるアヴァナ層とムリ砂層との関係を明らかにした。また、花粉分析と珪藻分析のための調査をおこない、環境の長期的変化に関するデ-タを収集した。第3年次には、ラロトンガ先史文化の編年の確立を意図して、アヴァナ川の沖積地にのぞむ丘陵の北麓に開口した岩陰遺跡の発掘調査をおこなった。きわめて良好な層堆積を発見し、年代測定の結果がでるのを待って
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所期の目的を達成する。 トンガレヴァ(ペンリン)島〜全島にわたる広範な調査によって24の祭祀遺跡(マラエ)を確認し、測量・記録をおこなうとともに、ニウテカインガ・マラエにおいて発掘調査をおこなった。発掘によって、マラエとウミガメの祭儀の関係が明らかになった。遺構から出土した炭化物から測定された年代340±80yB.P.は、一般に構築年代が不明なポリネシアのマラエ研究に貴重な成果をもたらした。首のない人物を模ってサンゴ石を積み上げたソコアウ・マラエは、イ-スタ-島のモアイ像に比べることのできる第一級の芸術作品ということができる。また、タウトゥアとテプカにおける居住遺跡と養魚池遺跡の発掘によって、貝製釣針、スクレ-パ-、石斧など多くの遺物が出土した。マラエの形態や釣針の型式は、ツアモツ諸島をはじめとする東部ポリネシア文化圏との密接な関係を示しており、本島がポリネシア文化史におい占める重要性を認めることができた。 マニヒキ島〜全島を踏査して、祭祀遺跡、居住遺跡の記録をおこなった上で、1990年度にはモツ・ポレアを、1991年度にはモツ・ハカマルを選定して、集中的な発掘調査をおこなった。これによって、マラエ、住居、炉、井戸、埋葬、耕地などを含む集落全体がサンゴ礁の自然条件との関連で明らかになり、伝統社会のセトゥルメントパタ-ンが復元された。マラエの諸特徴については、トンガレヴァ島のそれらとの間に相違があることが判明し、今後、検討すべき重要な課題を得た。 ラカハンガ島〜伝承と系譜の伝えるところにもとづいて、最初の祖先が定着したとされるテカインガを選び、マラエ、墓地、居住地などを含むセトゥルメトンパタ-ンの復元に全力を注いだ。釣計、スクレ-パ-、人骨など多くの遺物が出土し、初期居住の年代が、千数百年前にさかのぼることが明らかになった。遺構の分布は半族関係を示しており、社会復元にとって貴重な手がかりを得た。 今後の発展と計画:われわれは、予備的調査につづく3ケ年の調査において、クック諸島15島のうち半数の7島について調査をおこない、考古学的な空白地域に貴重な発見をもたらした。さらに、各島の埋蔵文化財の現況を確認し、文化財保護のための基礎的資料を整備することができた。これらは、今後、クック諸島政府の文化財保護行政に役立てられることになる。残された島々および地域についても、作業を継続する必要がある。幸い、ニュ-ジ-ランド・オ-クランド大学から共同研究の申し出がある。国際的協力のもとに、我々に課せられた目標を遂行し、完了させることを強くのぞむものである。 添付資料リスト 1.年代測定結果 2.ラロトンガ島 ガタンギア村 珪藻分析報告 3.プカプカ島(クック諸島)出土のイヌ 4.TE MATA:Looking at the Past.〜Archaeology in the Cook Islands.〜 5.クック諸島ー人間と先史社会ー 6.An Archaeological Survey of Pukapuka Atoll,1985.(Preliminary Report) 隠す
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