研究課題
ナイジェリアの農外就業の調査結果によれば、一部の開発計画地の換金稲作農民などの中には、都市部の賃金労働者よりも高い現金収入を得ている者がいるが、一般に都市部の低賃金労働者の賃金水準は、農村部の農民の現金収入の水準より高いことが判明した。経済的不況下においても、都市部での就業に人々が非常に強い意欲を持っている理由はこの点にあると思われる。一方エビヤ村の調査結果では、80年代の経済不況の影響を受けて、新卒の若年層が潜在的失業者として滞留し始めている事が明らかになった。このことは、耕作形態の調査で明らかとなった農業の労働粗放化傾向とも関係している。農村に滞留している若者たちはいわば「賃金労働者の予備軍」であり、農業基幹労働力とはなっておらず、互助労働組織も弱体化していることが判明した。ナイジェリア東部ゴンゴラ州における牧畜民ハウサ人の生業形態に関する予備調査では、彼らの経済活動に対する国民経済の変化の影響度が、農耕民のそれに比べ比較的弱いことが示された。タンザニアの調査においては、企業家と工場従業員との出身地の関係、農村部におけるロ-カル・マ-ケットの役割、またそこにおける小売りと仲買人の関係について調査を行った。この結果、企業が、農村と都市との中間的位置を占め、マ-ケットが農民にとって重要な役割を担っていることが明らかとなった。ザンビアの予備調査では、家計に占める牛の重要性が明らかとなるとともに、耕作と牧畜との有機的連関の欠如、家族内紐帯の弱さ、賃金雇用機会の極端な不足等、ナイジェリアでみられる状況と極めて対照的な現象が見られた。これは、経済的変動に対する農民の対応に仕方の違いを予想させるものである。この点については次年度の調査によって明らかにしたい。
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