研究課題
トンガ王国における1988年から1990年にかけての小児やその家族の健康状態の変化は、首都地区だけでなく離島地区においてもかなり進行し、食事パタンの変化への適応がうまくできていないことが主に次の点から明らかとなった。数値は離島地区の値、( )内は首都地区の値。1.口腔からみた健康度:小学6年生を例にすれば、う蝕2度以上の者が1988年12.5%から1990年42.1%(首都地区では58.2%→51.0%)、歯肉炎2度以上の者が同じく18.7%→47.4%(20.4%→58.5%)、不正咬合の者が37.5%ー42.1%(49.0%→49.1%)といずれも高率を占め、かつ増加傾向にある。2.免疫能の低下など生理的適応性からみた健康度:小児、成人共に尿、ヘモグロビン、ヘマトクリット値からみた貧血については良好な結果がみられた。しかし、成人の生化学検査による異常者率はGPT20.6%(20.0%)、UK21.4%(9.6%)、UA7.6%(20.7%)、TーCHO22.1%(26.7%)といずれも高率を示した。さらにB型肝炎についてHBsAgの陽性者が24%(15%)及びHbsAbの陽性者が69%(79%)と著しく高率で濃厚な汚染が示唆され、特記すべき結果である。小児期、思春期を含めた年代別の汚染の経過を明かにする必要がある。3.体格からみた健康度:肥満度の高い者が出現する年齢が男女共に8歳くらいからと他民族に比し若干早い傾向がみられた。思春期を中心として経年的に、かつ肥満度を直接的に計測する方法を検討の上、再測定の必要がある。(皮脂厚計による測定上の誤差率が高いことが明かとなった)4.1970年後半に比べて経過観察してきたトンガ成人の食事パタンでのキ-フ-ズの摂取重量の減少率が、いも55.0%(40.9%)、魚2.5%(29.3%)、ココナッツジュ-ス49.9%(81.0%)と著しい中、上記1ー3.で代表される健康上の問題点を具体的に解決する地域栄養保健計画の具体的提案が必要である。
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