研究課題/領域番号 |
01041084
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研究種目 |
国際学術研究
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 学術調査 |
研究機関 | 聖心女子大学 |
研究代表者 |
吉田 禎吾 聖心女子大学, 文学部, 教授 (60037025)
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研究分担者 |
上田 冨士子 九州国際大学, 国際商学部, 助教授
慶田 勝彦 九州共立大学, 経済学部, 講師
浜本 満 福岡大学, 人文学部, 助教授
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研究期間 (年度) |
1989
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キーワード | 病因論 / 世界観 / 疾病観 / 呪医(伝統的治療師) / 治療儀礼 / 憑依霊 / 邪術 / 呪薬(伝統的医薬) |
研究概要 |
今回は、ケニア海岸地方に住むミジケンダ諸族における「病気の文化」の比較研究の第一回目の調査として、吉田がディゴ民族、浜本がドゥルマ民族、慶田がカコネ-ニ地域のギリアマ民族、上田がマリアカ-ニ地域のギリアマ民族を対象に、病気の分類、疾病観、病因論、呪医(伝統的治療師)による病気治療儀礼などについて、現地調査を行なった。 吉田は、クワレ・ディストゥリクトのディゴの調査に従事し、邪術、病気の治療儀礼、憑依現象、病因論、イスラム教の影響などについて調査した。また、チリマニ村において、性関係のタブ-を犯してなる病気やこれを取り除く治療儀礼についても、インタビュ-によって資料を収集した。さらに、ディゴの生業や婚姻、クラン、親族関係、葬制、祖霊、死霊などについてもインタビュ-を行ない、一般的な民族誌的資料を集めた。加えて、吉田は研究代表者として、現地において研究分担者との会合を開いたり、分担者の調査地を訪れたり、また帰国後は書簡によって現地で調査を続けている分担者間の調整を行なうなどして、共同研究をスム-ズにした。 浜本は、これまで数回にわたって行なったドゥルマの調査資料をもとに、今回は、クワレ・ディストゥリクトのキジャモンゾ及びグァドゥの2地域を中心に、主として、ドゥルマにおける病因論の体系と病気治療儀礼について調査した。地域存住の呪医へのインタビュ-と、彼らの治療儀礼への参加を通して、資料を収集した。特に、一組の呪医夫婦の治療活動や生活に密着取材し、豊富な資料を得ることができた。そのかたわら、一般の人びとへのインタビュ-をも続け、両者の知識体系を比較するのに必要な資料をも収集した。 慶田は、ギリアマの伝統的な文化の特色を比較的明確に残している、キリフィ・ディストゥリクトのカコネ-ニ地域の村落において調査を行なった。主として、邪術、憑依霊、性の秩序の乱れによって引き起こると考えられている病気の特徴及び、その治療法について、インタビュ-と治療儀礼への参加によって、資料を収集した。また、生業、親族組織、死生観などについても調査を行ない、社会生活の様々な側面との関係において、呪医の力と権威の獲得についても資料を収集した。 上田は、カコネ-ニ地域の村落とは対照的な、ナイロビとモンバサを結ぶ幹線道路ぞいに発達した町のある、キリフィ・ディストゥリクトのマリアカ-ニ地域において、病気の分類、病因論、占いと治療儀礼、伝統医療と近代医療との関係、などについて調査を行なった。特に、出産、結婚、葬式などの通過儀礼や年中行事における性関係のタブ-と儀礼的性関係について、インタビュ-や病気占い、治療儀礼への参加を通して、タブ-を破ったり、儀礼的性関係を怠たった為に起る病気及びその治療についての資料を収集した。 各調査者は、月に一回モンバサに集まり、帰国後も東京において、統括的な報告会を行なった。このような会合において、互いの集めた資料について比較検討を行ない、共通点や相違点を明らかにし、資料や問題点を共有することができた。今後、今回の調査資料を整理し、分析し、比較していくことにより、ミジケンダ諸族における病気の分類と病名、病気の特徴、呪医による占いと病気治療の方法などが、ディゴ、ドゥルマ、ギリアマの民族レベルで明らかにされるであろう。と同時に、共通領域も明確にされるであろう。さらに、生業形態、社会組織、世界観などの資料を整理し、分析することにより、呪医の観念体系や社会的役割り、病気の文化に対する、より全体的な記述がなされるであろう。これまでミジケンダについてのくわしい民族誌がなかっただけに、本研究は、ミジケンダ諸族の文化人類学的研究に多大な貢献をするであろう。又、医療人類学の分野においても新たな展望を開くであろう。さらに、ケニアの医療活動や福祉にも貢献し得るであろう。しかし、今回の調査は、本研究の第一回目の調査として予備調査の段階に留まる点も多々あり、資料収集の不十分な分野も多い。したがって、平成3年、再度の調査を行ない、その後、成果を公にする予定である。
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