研究課題/領域番号 |
01042004
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研究種目 |
国際学術研究
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | がん調査 |
研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
速水 正憲 京都大学, ウイルス研究所, 教授 (40072946)
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研究分担者 |
野元 正弘 鹿児島大学, 医学部, 助手 (50208401)
石田 貴文 東京大学, 理学部, 助手 (20184533)
田島 和雄 愛知県がんセンター, 室長 (30150212)
難波 紘二 広島大学, 総合科学学部, 教授 (80156009)
納 光弘 鹿児島大学, 医学部, 教授 (10041435)
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研究期間 (年度) |
1989
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キーワード | 成人T細胞白血病 / エイズ / ヒト免疫不全ウイルス / サル免疫不全ウイルス / ヒトT細胞白血病ウイルス / HAM / TSP |
研究概要 |
アフリカ・インド・パプアニュ-ギニア・南米におけるHTLVー1とHIV及びその関連サルウイルスの疫学調査、ウイルスの分離・解析及びその病態の比較を行うことを目的としており、今年度は以下に述べる成果があった。 1.インド:タミ-ル等少数民族の多い南インドとボンベイで調査を行った。ボンベイでは1000名の一般供血者血清のうち1名が抗HTLVー1蛍光抗体(FA)陽性であった。また南部タミル・ナドウ州では外来患者より395例、白血病患者より34例の血清を得られたが、凝集法(PA)では陽性例があったものの、FAでは全て陰性であった。日本で見られるHTLVー1関連神経疾患であるHAMと類似のTSP患者の診察を南部2市で行い、そのうち8例はHAMと同じ症状であった。但しHAMでよくみられる排尿障害を伴わない例が多かった。剖検所見はHAMと全く同様であった。TSP例のうち1例でELISA抑制試験及びウエスタンブロット法(WB)により確実なHTLVー1陽性例が確認され、また不確かな1例があった。HTLVー1陽性例はTSP患者以外にも3例存在し、特に非圧迫性背髄症の1つでインドで報告されているEale's症候群で陽性があったことは注目される。いずれのHTLVー1陽性例においても血清よりも髄液中の抗体が明瞭であった。このようにHTLVー1はインドにも存在し、インドのTSPの中にも典型的なHAMと同じものがあることが初めて明らかになった。また典型的なHTLVー1とは異なるその関連するウイルスの存在が疑われた。現在、持ち返ったリンパ球からのウイルス分離を試みている。 2.南米(コロンビア):黒人が多い海岸部と離れ、互いに隔絶されたアンデス山地とアマゾン地域のインディオの調査を行った。アマゾン地域では4種族計86例を採血したところ、PAでは陽性2例があったがFA、WBともにいずれも陰性であった。アンデス地域では2種族計85例のうちパエズ族でPA3例、FA2例、WB3例の陽性が見いだされた。またこの地域にはTSP患者が見られた。 3.パプアニュ-ギニア:寺師班と共同で今年度は本島2地域で調査を行った。ラエではSTD患者を含め65例から採血し、そのうち4例がPA陽性であり、ポポンデッタでは72例のうち2例がPA陽性であった。PA陽性および疑陽性15例の末梢リンパ球を培養したところ、いずれも抗HTLVー1血清によって認識されるウイルス抗原は検出されなかったが、1例では自己血清によりFA抗原が認められた。HTLVー1とは別の関連ウイルスの可能性を現在検索中である。 昨年度また寺師班が集めたパプアニュ-ギニア各地域の血清1528検体を調べたところ、PAでは208例、FAでは31例が陽性であった。FA陽性例は中央山岳部では皆無で、北部海岸部及び島部に多かった。しかしソロモン諸島は全て陰性であった。また年齢別分布は我が国における加齢に伴う増加は見られず、若齢層に多い傾向が見られた。 4.アフリカ(ケニア・ガ-ナ):ガ-ナにおいては病理組織標本の保存が悪く観察できなかったが、タンザニアでは可能であった。その悪性リンパ腫は日本と異なっており、T細胞白血病のうちHTLVー1との関係が疑われるものが存在していた。 ガ-ナのAIDS/ARC患者よりHIV2株を分離できた。1株は従来知られているHIVー1群と考えられたが、1株はHIVー1とHIVー2のDNAプロ-ブとハイブリダイズしないことから、第3のエイズウイルスの可能性があった。一部の遺伝子配列の決定を行ったところ、HIVー2関連であったが、従来のHIVー2群とは大きな相違があり、別群と考えられた。
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