タイ国における若年性喉頭乳頭腫の疫学調査研究

1990 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 01042006
• 研究機関: 鹿児島大学
• 研究代表者: 大山 勝 鹿児島大学, 医学部, 教授 (70024677)
• 研究分担者: ACHAREE Sora Chiang Mai大学, 医学部, 教授 ; CHEERASOOK C Mahidol大学, 医学部, 助手 ; KHEMCHART To Chulalongkorn大学, 医学部, 講師 ; BOONLUAN Pha NIH研究所(タイ国), 所長 ; SUMET Peervu Songkla大学, 医学部, 助教授 ; PHAKDEE Sann Rajvithi病院, 講師 ; SOONTORN Ant Rajvithi病院, 教授 ; 内薗 明裕 鹿児島大学, 医学部, 助手 (60221107) ; 坂本 邦彦 鹿児島大学, 医学部, 助手 (80178566) ; 花牟礼 豊 鹿児島大学, 医学部附属病院, 講師 (40145496) ; 藤吉 利信 鹿児島大学, 医学部, 助教授 (50173480) ; 羽倉 明 大阪大学, 微生物病研究所, 教授 (00029779) ; 園田 俊郎 鹿児島大学, 医学部, 教授 (40036463) ; 吉村 望 鹿児島大学, 医学部, 教授 (60041399) ; 小田 絋 鹿児島大学, 医学部, 教授 (40107868) ; 吉田 浩己 鹿児島大学, 医学部, 教授 (90036476)
• キーワード: 若年性喉頭乳頭腫 / HPVー6 DNA / HPVー11 DNA / PCR / Dot blot法 / Western blot法 / 分子クロ-ニング / 制限酵素切断地図

研究概要

(1)患者組織におけるHPVの検索 Dot blot法、Polymerase Chain Reaction(PCR)法を用いて、タイ国の若年性喉頭乳頭腫患者組織中にHPV DNAの検索を行った。Dot blot法及びPCR法により、25例の同患者組織を検索した結果、20例(80%)にHPVー11 DNAを検出し、1例(4%)にHPVー6 DNAを検出した。HPVー16 DNA、HPVー18 DNAは、いずれの組織中にも検出されなかった。日本や台湾、韓国などのアジア近隣諸国と比較しても、HPVー11が非常に高い率で検出されており、非常に興味に深い知見といえる。また、PCRにて、βーglobin遺
伝子とHPV DNAを同時に増幅し、両者の増幅の度合を比較することで、HPV DNAは、1細胞あたり、数十コピ-以上存在することが示唆された。 (2)HPV DNAの分子クロ-ニング タイ国患者組織から、ウイルスDNA分離、クロ-ニングすることに成功した。このクロ-ン化されたHPV DNAの制限酵素切断地図を作製し、既知のHPV DNAとの比較、検討を行ったが、既知のHPV 11との差異は認めなかった。従って、タイ国で本腫瘍が多発するメカニズムとして、ある特異的なHPV subtypeが関与している可能性は否定された。今後宿主要因及び環境因子を検索することの重要性が示唆される。 (3)HPV融合蛋白の遺伝子工学的合成 タイ国患者組織から分離、クロ-ン化したHPVー11 DNAから、L12、E6とβーgalactosidaseとの融合蛋白をそれぞれ大腸菌に発現させた。これらの融合蛋白を、western blot法にてニトロセルロ-ス膜に転写し、タイ国の乳頭腫患血清との反応を調べた。その結果、L2融合蛋白に対する反応がみられ、L2蛋白に対する抗体が、患者血清中に存在することがわかった。これまで、HPVー11の血清学的診断法は確立されていないが、この結果により、これらの融合蛋白の血清学的診断への応用の可能性が示唆された。

研究成果

• [文献書誌] 大山 勝: "タイ国における若年性喉頭乳頭腫の臨床疫学的ならびにウィルス学的研究" 喉頭. 1. 46-51 (1989)
• [文献書誌] Ohyama,M.: "Juvenile laryngeal papillomatosis in Thailand." Comparative study of epidemiology and prevention of cancer. 53-59 (1990)