中国東北部地域における神経芽細胞腫の遺伝子解析

1991 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 01042008
• 研究機関: 産業医科大学
• 研究代表者: 東 監 産業医科大学, 医学部, 教授 (30028386)
• 研究分担者: 温 博貴 汕頭医学院, 生化学教室, 教授 ; 任 常山 中国医科大学, 腫瘤研究所, 副教授 ; 後藤 貞夫 産業医科大学, 医学部, 助教授 (50131917)
• キーワード: 神経芽細胞腫 / Nーmycオンコジン / 遺伝子増幅 / 民族差 / Lーmyc RFLP

研究概要

中国南昌市の江西医学院から汕頭市の汕頭大学医学院へ温博貴が移動したため、汕頭大学を訪れ神経芽細胞腫の手術材料の収集のル-トの確立を申し入れた。医学院院長(学長)は病理学教授及び腫瘤病理研究室主任を兼任しておられたので、癌の研究には理解が深く、当方の申し出を快諾し、2例ではあるが神経芽細胞腫の典型的な病理組織像を示すパラフィン固定病理標本を、温氏を通じて我々にくれた。汕頭大学の医学院は増築中で基礎医学、臨床医学の医師らのより高いレベルでの医学研究、及び熱意が強く、我々の大学との将来の協力体制の確立を望んでいた。汕頭市では、食道癌及び肝癌が非常に多く、特に食道癌の遺伝子解析に要るDNAプロ-プをこちらから送り、共同研究を始めつつある。確実な診断のついた神経芽細胞腫は当初期待していた程には中国で集めるのは困難であることが分かったが、可能な限り継続して行きたい。現在までに集めてくれたDNAの試料の全てが必ずしも確実な診断はついていない可能性は高いが、Nーmycの増幅のない神経芽細胞腫が中国人の腫瘤の特長であることを否定する根拠もない。我々が日本国内で集めた神経芽細胞腫のDNAについて、従来から高転移能と相関関係があるといわせているLーmyc遺伝子のRFLPを調べたところ、Nーmycの増幅があり広範囲に転移し予後も悪い症例ではS型が圧倒的に多かった。一方、予後の良好な症例のLーmycのRFLPのパタ-ンは健康人のそれと殆んど変わらなかった。これまでに中国人から得た神経芽細胞腫のDNAのLーmycのRFLPは、日本人や欧米人のLーmycについて報告されている健康人のパタ-ンよりも更にS型が少なく、逆に神経芽細胞腫のDNAであるにもかかわらずL型が多く、Nーmycの増幅がみられない民族の遺伝子の特長である可能性も残されている。

研究成果

• [文献書誌] Tadamasa MURAKAMI: "Differences of L-myc polymorphic patterns of neurobastoma in patients between less than one year and older ages" J.Pediatric Surgery. (1992)
• [文献書誌] Akira NAKAGAWARA: "Inverse correation between N-myc amplification and catecholamine metabolism in children with advanced neuroblastoma" Surgery. 107. 43-49 (1990)
• [文献書誌] Akira NAKAGAWARA: "Amplification of clone 8 as a prognostic indicator of neuroblastoma" Eur.J.Pediatrics. 148. 684 (1989)
• [文献書誌] Akira NAKAGAWARA: "Surgical aspects of N-myc oncogene amplification of neuroblastoma" Surgery. 104. 34-40 (1988)
• [文献書誌] Masao YAMADA: "Amplified allele of the N-myc oncogene in neuroblastomas" Jpn.J.Cancer Research (Genn). 76. 670-673 (1988)
• [文献書誌] Akira NAKAGAWARA: "N-Myc oncogene ampification and prognostic factors of neuroblastoma in children" J.Pediatric Surgery. 22. 895-898 (1987)
• [文献書誌] Tadamasa MURAKAMI (eds.by A.Evans et al).: "The effect of changes of N-myc products on the gene expression of heat-shock protein(hsp70) and nucleolin during differentiation of neuroblastoma cells in"Advances in Neuroblastoma Research,vol.3" Wiley-Liss,Inc.,New York, 65-70 (1991)