研究分担者 |
LEARNED J. ハワイ大学, 教授
上原 貞治 高エネルギー物理学研究所, 助手 (70176626)
作田 誠 高エネルギー物理学研究所, 助手 (40178596)
林野 友紀 東北大学, 理学部, 助手 (10167596)
山口 晃 東北大学, 理学部, 助教授 (60004470)
田中 昌 東北大学, 理学部, 教授 (70004306)
山本 勲 岡山理科大学, 工学部, 助教授 (50090220)
北村 崇 近畿大学, 理工学研究所, 教授 (10013426)
小早川 恵三 神戸大学, 教養部, 教授 (00031287)
三井 清美 東京大学, 宇宙線研究所, 助手 (80013340)
岡田 淳 東京大学, 宇宙線研究所, 助手 (90013341)
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研究概要 |
1.DUMANDIIの実施計画:日米欧の研究者でDUMANDIIの実施計画を検討し、計画実現に向けて具体的な作業を進めることにした。DUMANDIIは、10m毎に24個の光検出器を取り付けた9本の索で構成する観測装置で、ハワイ島の沖合30km・深さ4.8kmの地点に設置する計画である。9本の索は1本を中心に置き、その周囲に40m間隔で八角柱状に配置する。平成元年より準備を開始し、平成3年までに3本の索を建設し、残り6本の索を出来るだけ早い時期に完成させる予定である。 2.DUMANDIIの物理目的:DUMAND計画の主目的は高エネルギ-ニュ-トリノの点源探索にある。Mt.Hopkinsのグル-プによりCrab Nebulから7x10^<-11>/cm^2・s(≧400GeV)の強度のガンマ線が観測されている。このガンマ線がハドロン起源であれば、DUMANDIIによりニュ-トリノ信号が初めて観測される可能性が高い。最近、宇宙ひも(C.S.)や活動的な銀河の中心核(AGN)からの超高エネルギ-ニュ-トリノの検出可能性についても理論家により言及されている。いずれもdiffuse sourcesであるが、10TeV領域で大気ニュ-トリノよりdominantになり、DUMANDIIで検出される可能性があるとの指摘である。前者についてはMacGibbon et al.の計算によれば、アキシオン場のエネルギ-スケ-ルの領域(10^<12>GeV)でC.S.存在の有無を検証できる。後者についてはStecker et al.による計算があり、DUMANDIIにより検出されるニュ-トリノ事象は4,000events/yr.(>25GeV)と予想されていて興味深い。また、FNALで計画されている高強度のビ-ムを利用することにより、DUMANDによってニュ-トリノ振動の研究を行うことが計画されている。FNALとDUMANDとは約6,200km離れており、特に物質中でのニュ-トリノ振動現象の検証では特徴ある研究が可能となる。但し、この計画を実現するためにはDUMANDによるニュ-トリノ検出のエネルギ-閾値を20GeV以下にする必要があり、目下この方策を検討している。 3.深海でのバックグラウンド光:光電子増倍管を使用して得た測定デ-タを検討した結果、生物に起因するバックグラウンド光の影響は個々の検出器の狭い範囲に限られることが分かった。従って、同時計数の条件を課することにより、バックグラウンドの影響を少なくすることが出来る。高感度ビデオを使用して日本近海で行った測定でも、生物発光は機械的な刺激と深い関わりがあることが確認された。ビデオによる測定はDUMAND siteであるハワイ島の沖合でも2,500〜4,500mの深さで実施した。DUMAND siteでのバックグラウンド光量は日本近海に比してかなり少ないことが判明した。 4.観測装置の性能:宇宙起源のニュ-トリノは二次粒子であるミュ-オンが放射するチェレンコフ光によって検出される。観測装置が高エネルギ-ニュ-トリノを検出する有効面積や到来方向の決定精度は、粒子のエネルギ-や入射方向に依存する。^<40>Kや生物発光によるバックグラウンド光を考慮して観測装置の性能を推定するシミュレ-ションを行った。その結果、有効面積と角度の分解能は各々、〜16,000m^2と〜1.3°であり、また下向きの大気ミュ-オンをニュ-トリノ現象と見誤る割合は10%程度であることが分かった。他方、大気宇宙線に含まれる多重ミュ-オンは宇宙線の組成を研究する上で重要な情報量である。多重ミュ-オンによる信号をカスケ-ドを伴う高エネルギ-ミュ-オンのそれから弁別する方策をシミュレ-ションにより検討した。その結果、事象の弁別には信号の波高値とバルス中の両方の情報を用いるのが有効であることが分かった。 5.光検出器の改良:光検出器の波高分解能及び時間分解能は観測装置の性能を左右する。光センサ-として使用する口径15吋の光電子増倍管の陰極の形状及びダイノ-ドの電極構造を最適化して、性能の向上を図っている。このように大型の光電子増倍管では感度の一様性が重要であり、特に地磁気による影響を少なくすることが必要である。0.7mm巾のμーメタル線材を40mmピッチで編んだメッシュにより、透明度を損なうことなくシ-ルド効果を得られることが分かった。他方、光検出器の電子回路は信号の波高値とパルス巾を記録できるように、又1nsの精度の時間分解能が得られるように設計を進めている。
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