研究分担者 |
HERSKIND Ben コペンハーゲン大学, ニールズボーア研究所, 講師
DOSSING Thom コペンハーゲン大学, ニールズボーア研究所, 助教授
HAGEMANN Gud コペンハーゲン大学, ニールズボーア研究所, 講師
大塚 孝治 東京大学, 理学部, 助教授 (20201379)
MOTTELSON Be コペンハーゲン大学, 北欧物理学研究所, 教授
水鳥 正二郎 東京大学, 原子核研究所, 学振特別研究員
坂本 秀生 岐阜大学, 工学部, 講師 (60211265)
池田 秋津 静岡理工科大学, 理工学部, 教授 (40016126)
菅原 昌彦 千葉工業大学, 自然系, 講師 (00146284)
草刈 英栄 千葉大学, 教育学部, 教授 (00092049)
井上 光 広島大学, 理学部, 助教授 (30028170)
御手洗 志郎 九州大学, 理学部, 助手 (00108648)
小松原 哲郎 筑波大学, 物理学系, 助手 (10195852)
古野 興平 筑波大学, 物理学系, 教授 (40015772)
丸森 寿夫 筑波大学, 物理学系, 教授 (10037145)
DPHISSING Thomas Niels Bohr Institute, Copenhagen University
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研究概要 |
本研究プロジェクトは,広大・筑波大・九大から別途概算要求され,昭和62年度予算で日本分担部分が認められ,デンマ-ク国ニ-ルスボ-ア研究所に設置された高分解能・高精度・全立体角ガンマ線測定器系(NORDBALL)を用いて、高速回転する原子核の極限状態・高温高励起状態に関する実験的研究と,関連する理論的研究とを,東京大学原子核研究所を窓口とした日本の研究者とニ-ルスボ-ア研究所の研究者との共同研究により推進する事を目的とした。日本の実験グル-プは当初実験施設の建設に協力した。特にニ-ルスボ-ア研究所の後段加速器の建設に対して筑波大のグル-プは大きな貢献をした。また九大のグル-プはNORDBALL内に装着する核反応チャネル識別システム(シリコンボ-ル)を開発して,質量数A=80〜90領域核の核分光学的研究の可能性を用いた。 日本の実験グル-プは3つの実験プロジェクトを遂行した。(実験プロジェクトI:A〓130近傍の高速囲状態の研究) ^<124>Csの一対の回転スペクトルにおいて,回転整列が発生する以前に従来重い原子核で得られていたものとは明らかに質の異なる指標逆転現象を発見した。この現象は,三軸非対称変形またはガンマ振熱を考慮するクランキング模型,または中性子・陽子相互作用を含む粒子・囲転子模型で十分に説明できない。同様な現象は ^<126>Csでは観測されるが ^<124>Laでは観測されない事も明らかとなった。(実験プロジェクトII:A〓80ー90近傍の高速回転状態の研究)シリコンボ-ルとNORDBALLとの結合により,A〓80ー90における新しい変形核領域の研究が飛躍的に進んだ。この結果 ^<87>Mo, ^<87>Nb, ^<85>Nb, ^<82>Y, ^<81>Y, ^<82>Zr, ^<82>Srについて新しい準位構造が確立され,その詳しい解析が進められている。これら実験から得られた情報は,クランキング模型によるポテンシャル・エネルギ-面の安定形状の計算及び独立粒子エネルギ-の回転周波数依存性の計算と比較して検討されている。N/Z=40に向って核子数を変えると,Prolate変形に向って大きく変形する事,N=46近傍で球形から変形への転位が起る事,またN〓45では基底状態近くの弱い変形が,原子核の回転速度とともに大きく変形する事などが確立されつつある。他方,シリコンボ-ルを用いた実験は欧州の研究者からも注目され,多くの共同研究を産み幅広い成果が挙げられつつある。今後の国際共同研究の継続が欧州の研究者からも強く支持され,期待されている。(実験プロジェクトIII:還移領域核のク-ロン励起による研究) ^<32>S, ^<48>Ti, ^<58>Niビ-ムを用い ^<150>Sm, ^<154>Sm, ^<154,155,156,158,160>Gdのク-ロン励起の実験を行なった。また ^<154>Sm+ ^<58>Niではク-ロン・核子移行反応の実験も行なった。この結果 ^<154>Smの4つのバンド上に9ケの新しい準位を加え,また4^+〜14^+の新しいバンドを確定した。 ^<158>Gdでは八重極バンドの上に¬^ー,α^ーの準位が見つかった。 他方日本の理論グル-プはコペンハ-ゲンの研究者のみならず,ニ-ルス・ボ-ア研究所に世界各国から集まって来る研究者との共同研究,討論を行ない,多くの研究成果を挙げた。高スピン状態の核分光学的研究によって,“回転している平均場中での独立粒子運動(回転系殻模型)"が広範な領域で成立している事が確立されたのは本共同研究の始まった直前である。また長軸と短軸の比が2:1であるような起変形状態が実験的に確立されたのもこの時期であった。以降理論的研究では回転殻模型+乱推位相近似+粒子振動結合という枠組の中で,奇核の電磁遷移の計算・高スピン状態における対相関の役割,超変形態での対相関と八重極相関など詳細な検討が行なわれた。また三軸非対称性の効果の理論的検討,超変形状態の生成と崩壊機構,高温領域から崩壊する時に発生するガンマ線の統計的解析方法などが理論的に取り扱かわれた。更に核内集団運動と有効相互作用の検討,相互作用するボソン模型,粒子・回転子模型,生成座標の方法に基づく理論の検討も進んだ。これらの理論の展開の中で,平衡一体場から遠く離れた状態の記述,大振幅集団運動論の展開が,非線形性を取り入れた新しい理論体系として提起され,原子核物理が新しい段階へと発展しつつある。
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