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1991 年度 研究成果報告書概要

「イベリア系文化圏」における農村共同体の再編と都市の変容

研究課題

研究課題/領域番号 01044051
研究種目

国際学術研究

配分区分補助金
応募区分共同研究
研究機関東京外国語大学

研究代表者

清水 透  東京外国語大学, 外国語学部, 教授 (60014453)

研究分担者 林 みどり  フェリス女子大学, 文学部, 非常勤講師
GONZALEZ Pil  パリ高等研究院, 主任研究員
DELGADO Ruiz  バルセロナ大学, 人類学部, 教授
DE Vos Jan  CIESAS, 首席研究員
初谷 譲次  天理大学, 外国語学部, 講師 (10180895)
鈴木 茂  東京外国語大学, 外国語学部, 講師 (10162950)
高橋 正明  東京外国語大学, 外国語学部, 助教授 (60134748)
落合 一泰  帝京大学, 文学部, 助教授 (50212337)
坂井 信生  九州大学, 文学部, 教授 (90067794)
研究期間 (年度) 1989 – 1991
キーワードラテンアメリカ / 都市・周縁社会関係 / 都市エスニシティ / メキシコ / チリ / ブラジル / スペイン / 都市の“農村化"
研究概要

本研究では、ラテンアメリカとスペイン・ポルトガルをひとつの「イベリア系文化圏」としてとらえ、都市エスニシティ-の形成と変容の問題について、農村共同体をはじめとする周縁的諸社会の側から検討することが、主たる目的であった。
比較対象地域としてわれわれは、都市形成過程における歴史的特徴にしたがって、以下の4地域を選んだ。すなわち、原住民村落と密接な関連のあるメキシコ地方都市、その影響の少ないチリの都市黒人系住民の影響の強いブラジルの都市、そして、スペインでは首都マドリ-ドに常に対抗してきた地方都市バルセロ-ナである。
予算上の制約から当初の計画はいくぶん縮小し、また、国外研究分担者の都合により一部メンバ-の交替もあったが、初年度より海外調査、国内研究会ともに順調に進展し、また、国外研究分担者はもとより、国外研究諸機関との関係も大幅に拡大した。ちなみにメキシコでは、CIES(南東部エコロジ-研究所)、INI(原住民局)に加えて、CIESAS(社会人類学高等研究院)、チアパス自治大学と、ブラジルでは、サンパウロ大学に加えて、サンパウロ州黒人コミュニティ-社会参加開発局、州立カンピナス大学、フルミネンセ連邦大学、リオデジャネイロ州立大学、カンディド・メンデス大学アフロ・アジア研究センタ-との関係を新たに確立することができ、共同研究の国際的な協力体制をさらに強化することができた。
清水・坂井は主として、メキシコの地方都市サン・クリストバル市と周辺原住民諸社会との地域的社会関係、とくにインディオ共同体との分裂と都市における離村インディオ・コロニ-の調査にあたり高橋はチリの首都サンディアゴ市のスラム住民の意識と運動の分析、鈴木は主としてサンパウロ市における黒人系住民の歴史的意味と社会的結合形態について、初谷はメキシコ・ユカタン半島のインディオ村落におけるアイデンティティの再編について、落合はバルセロ-ナにて、およびラテンアメリカ地方都市とスペインの地方都市との比較研究にあたった。
また最終年度には、国外研究分担者のジャン・デ・ボス(メキシコ)とマヌエル・デルガ-ド(バルセロ-ナ)を招請し、国内にて総括的研究報告会を開催した。その報告会の成果は、スペイン語・ポルトガル語の報告書としてまとめたが、3年間にわたる共同研究をつうじて明らかとなった要点を集約するなら、以下のとおりである。
(1)都市=農村・周縁社会関係が、1970年代を境に、構造的・現象的に変化を遂げはじめ、その変化が、都市の文化・社会関係はもとより、国政レベルの政治構造をも根底から揺り動かしつつあること。
(2)こうした変化は、恐らくラテンアメリカの特殊性をはらみながらも、世界各地で顕在化しつつある「小数民族問題」や「外国人労働者問題」にみられるように、世界的な現象の一環として把握されるべき問題であろうこと。
(3)その変化の過程は、従来の都市側からの価値の普遍化の力が限界に達しつつあり、構造的にも現象的にも、周縁的社会の側が都市のありかたを規定しつつあることを意味する。例えばメキシコのサン・クリストバル市の〈インディオ化〉。
(4)その変化の過程は、歴史的には都市側からの圧力の結果といえようが、直接的な原因としては、宗教問題、とりわけプロテスタントへの改宗問題と新宗教の台頭が、メキシコ・ブラジルでは、きわめて重要であること。
従来のラテンアメリカの都市研究では、都市対農村という二項対立的発想、あるいは「都市的近代」を単線的経済発展の基軸に据えた経済主義的・近代化論的発想にもとづくものが多く、基本的には都市側からの視点が主流をなしていた。本研究をつうじてわれわれは、都市性の問題を周縁諸社会を含むエスニシティ-の再編過程の一環として捉えることの重要性を改めて確認した。もうひとつの目的であった「イベリア文化圏」の特徴を抽出する点については、今後の課題として残さざるをえなかった。

  • 研究成果

    (14件)

すべて その他

すべて 文献書誌 (14件)

  • [文献書誌] 清水 透: "ゆれうごく都市" 『都市・空間・建築の根拠をさぐる』. 218-255 (1991)

    • 説明
      「研究成果報告書概要(和文)」より
  • [文献書誌] 清水 透: "村から都市へー離村インディオによる都市の〈インディオ化〉" 『現代移民論』. (1992)

    • 説明
      「研究成果報告書概要(和文)」より
  • [文献書誌] 高橋 正明: "ポグラド-レスの世界(2)" 『地球紛争と国際関係』. 109-167 (1991)

    • 説明
      「研究成果報告書概要(和文)」より
  • [文献書誌] 高橋 正明: "チリにおけるポグラド-レス研究の展開" 『アジア経済』. 32ー4. 33-55 (1991)

    • 説明
      「研究成果報告書概要(和文)」より
  • [文献書誌] 初谷 譲次: "インディオ反乱と国家統合" 『グリオ』. 2. 131-137 (1991)

    • 説明
      「研究成果報告書概要(和文)」より
  • [文献書誌] 落合 一義,増田 義一郎編: "先住民の植民地時代" 『ラテンアメリカ史』. (1992)

    • 説明
      「研究成果報告書概要(和文)」より
  • [文献書誌] 清水 透: "メキシコにおける空間と場" 三交社, (1992)

    • 説明
      「研究成果報告書概要(和文)」より
  • [文献書誌] SHIMIZU, Toru: "The Trembling City" EHESC (ed.), Toshi, Kuukan no Konkyo wo saguru. 218-255 (1991)

    • 説明
      「研究成果報告書概要(欧文)」より
  • [文献書誌] SHIMIZU, Toru: "Immigration from Indian Community to Urban Centre : the Indigenization of a Mexican City" Gendai Imin Ron. (1992)

    • 説明
      「研究成果報告書概要(欧文)」より
  • [文献書誌] TAKAHASHI, Masaaki: "The World of "Pobladores" (2)" Chiiki Funnsoo to Kokusaikankei. 109-167 (1991)

    • 説明
      「研究成果報告書概要(欧文)」より
  • [文献書誌] TAKAHASHI, Masaaki: "Chilean "Pobladores" under the Military Regime" Ajia Keizai. 32-4. 33-55 (1991)

    • 説明
      「研究成果報告書概要(欧文)」より
  • [文献書誌] HATSUTANI, Joji: "Indian Rebellion and National Integration : A case of Mexican Maya" Griot. 2. 131-137 (1991)

    • 説明
      「研究成果報告書概要(欧文)」より
  • [文献書誌] OCHIAI, Kazuyasu: Yamakawa-Shuppan. The Indigenous People in Colonial Period Yoshiro MASUDA (ed.), Latin American History,

    • 説明
      「研究成果報告書概要(欧文)」より
  • [文献書誌] SHIMIZU, Toru: Sankoo-sha. Space and Topos in Mexican History, (1992)

    • 説明
      「研究成果報告書概要(欧文)」より

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公開日: 1993-03-16  

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