遺伝子の発現を制御する卵細胞質因子に関する分子生物学的研究

1990 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 01044077
• 研究機関: 京都大学
• 研究代表者: 佐藤 矩行 京都大学, 理学部, 助教授 (30025481)
• 研究分担者: 西方 敬人 日本学術振興会, 特別研究員 (80212116) ; 真壁 和裕 日本学術振興会, 特別研究員 (60222288) ; WILLIAM R. J カリフォルニア大学, ボデガ臨海実験所(米国), 教授
• キーワード: 筋肉細胞分化 / 特異的遺伝子発現 / 分化決定因子 / 卵細胞質 / アクチン遺伝子 / ミオシン重鎖遺伝子

研究概要

1.筋肉細胞特異的遺伝子の解析:マボヤ胚のcDNAライブラリ-から筋肉特異的ミオシン重鎖およびアクチンのcDNAクロ-ンを単離した。これらのプロ-ブを使ってこの二つの遺伝子の発生にともなう発現パタ-ンをノザンブロットおよびin situハイブリダイゼ-ションで調べたところ、両遺伝子とも嚢胚期から予定筋肉細胞でのみ発現してくることが分かった。筋肉アクチンに関してはジェノミックDNAを単離しつつあり、得られしだいこの遺伝子の発現を制御している領域を解析するつもりである。またミオシン重鎖のcDNAはその全長が約6kbという大きなもので、ジェノミックDNAの単離にてまどっているが、ようやく5'に近いcDNAクロ-ンが得られたので、こちらもジェノミックDNAをとる予定である。また将来の解析に備えて、マボヤ受精卵の外来遺伝子の導入法の検討も開始している。
2.卵細胞質因子の解析:我々のグル-プは因子をタンパク質と想定して、モノクロ-ナル抗体法を駆使して解析を進めている。一つの候補としてマイオプラズミンC1分子を見つけ、現在そのcDNAを解析している。また本年度になってマイオプラズム(決定因子を含む細胞質)を比較的容易に単離できる方法を開発することができたので、受精卵への因子の顕微注入を含めた解析が進ものと期待される。一方、ジェフェリ-のグル-プは因子をmRNAと想定して、マイオプラズム特異的cDNAの単離を試み、何種類かのマイオプラズム特異的cDNAの単離に成功して、現在その分子の解析を進めている。

研究成果

• [文献書誌] Satoh,Noriyuki: "Cellular and molecular mechanisms of muscle cell differentiation in ascidian embryos" International Review of Cytology. 122. 221-258 (1990)
• [文献書誌] Makabe,Kazuhiro W.: "Specific expression of myosin heavy chain gene in muscle lineage cells of the ascidian embryo" Roux's Arch. Developmental Biology. 199. 307-313 (1990)
• [文献書誌] Kusakabe,Takehiro: "Temporal and spatial wxpression of a muscle actin gene during embryogensis of the ascidian Halocynthia roretzi" Development,Growth & Differentiation. 33. ). 02%33 (1991)
• [文献書誌] Satoh,Noriyuki: "Expression of muscle myosin heavy chain gene in quarter ascidian embryos" Journal of Experimental Zoology. ). 02%33 (1991)
• [文献書誌] Satoh,Noriyuki: "Developmental Biology" (Eds.)E.H.Davidon WileyーLiss,New York, 143-151 (1990)
• [文献書誌] Satoh,Noriyuki: "Cytoplasmic Organization System" (Ed.)G.M.Malacinski McGraw ーHill Publ.Co.,New York, 105-122 (1990)