研究課題/領域番号 |
01044078
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研究種目 |
国際学術研究
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
三浦 泰蔵 京都大学, 理学部, 助教授 (20025274)
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研究分担者 |
高村 典子 環境庁国立公害研究所, 主任研究員 (80132843)
前田 広人 滋賀県琵琶湖研究所, 主任研究員
岩田 勝哉 和歌山大学, 教育学部, 教授 (10031816)
小長谷 庸夫 三重大学, 生物資源学部, 教授 (30024821)
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研究期間 (年度) |
1989
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キーワード | 中国綜合養魚 / 養魚池生態系 / 水草食魚 / プランクトン食魚 / 一次生産 / 腐植群集 / 腐植食物連鎖 / テレメトリ- / 魚類行動量 |
研究概要 |
極端に高い生産を示すこの種の養魚池の生産構造は次のように考えられてきた。先ず、隣接する湖に自生する水草を投入することによって、水草食のソウギョ、ブショウギョの生産を計り、これらの排出する糞が分解されて窒素、燐などの無機栄養塩となり、植物プランクトンの生産を促す。それを植物プランクトン食魚と動物プランクトンが餌資源として利用し、更に動物プランクトンを他の魚が利用する。しかし、このような構造では有り得ない高い生産を上げている。従来の研究では微生物の役割の評価が殆ど組み込まれていなかった点に着目し、水草食魚の糞を栄養源また生活場所とした10μm以下の微生物から諸魚類に至る食物連鎖網が魚類生産向上に付加的役割を果たしているとゆう仮説を設定し、研究を開始した。 アンモニア態窒素、硝酸態窒素の濃度が何れも高く、過栄養レベルにある。燐酸態燐の濃度は低く、植物プランクトンの成長に対する制限因子になる可能性が考えられるが、植物プランクトンの体内のP/N比からは燐が制限している兆候は認められない。おそらく一般湖沼の数倍の速度で底泥から回帰される無機燐が絶えず供給されているからであろう。 細菌の密度は高く、富栄養一過栄養水域のレベルにある。特に下層で高く、懸濁粒子の多いことに関係していよう。 植物プランクトンでは大型の藻類(>10μm)が極端に少ない。これは植物食魚の摂食圧がかかるためであろう。クロロフィル量の70ー87%が10μm以下のナノプランクトン(2ー10μm)、ピコプランクトン(0.2ー2μm)によって占められており、中でも、後者の占めるクロロフィル量は従来の報告の1オ-ダ-高い値を示し、この分画の光合成活性は他の分画に比べ高い方であった。 ソウギョやブショウギョの消化管内の水草は細胞組織の大部分が破壊されておらず、その表面には細菌が付着している。特に前者では糞の表面よりも大きい細菌がより多く付着している。消化管内で増殖し、更に栄養物として魚に利用されるとゆう過程の存在を暗示している。 ソウギョの糞の経時的変化を追うと、乾燥重量当たりの有機炭素、窒素、アミノ酸量は分解が進むにつれて増大した。走査型電子顕微鏡(SEM)で観察すると、分解初期では水草の細胞表面には付着物が少ないが、6ー8日後には多数の付着硅藻類(優占種はCocconeis placentula)や細菌類、その他の不定形の物質が密に付着した大型粒子になる。池内のコクレンやカワチブナの消化管にはこのような粒子が多数認められた。また、ギンブナの糞中には全色素量の25ー49%ものクロロフィルbが認められ、ギンブナも同様にこの粒子群集を栄養源にしていると考えられる。 一方、ハクレンの消化管内容物の粒子はコクレンのものと比べて粒径が小さく、また糞にはクロロフィルbの含有量が低いので、主として植物プランクトン起源のものに依存していることを示している。また、糞中色素の分析結果から判断して、消化管通過中の藻類のクロロフィルaは殆ど分解されていないようである。 糞の光合成活性はギンブナよりハクレンで高く、池中の藻類と同じか半分程度の速度を示した。この活性は糞を一昼夜暗条件におくと、ギンブナの糞では池中の藻類の1.5倍、ハクレンでは1.5ー4.0倍もの光合成速度とゆう注目すべき結果を得た。 今回の研究で2μm以下の微生物群の存在様態がかなり明らかになった。そして、それらが水草食魚の糞の破砕粒子とともに群集を形成することによって、プランクトン食魚が摂食することを可能にしているとゆう新知見を得た成果は大きい。また、この粒子にはかなり大型の硅藻が高い密度で付着しており、消化管に取り込まれるとゆう事実も新発見である。これらの過程が綜合養魚池の高生産に結びついている可能性は十分にあろう。全生産過程のうち上記の過程の量的役割の評価が次の課題である。
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