研究課題
国際学術研究
西独ダルムシュタットの重イオン研究所(GSI)において1990年に新しい加速器SISが完成する。その不安定核ビ-ムを用いて、現在、大阪大学で基礎研究を行っている超流動ヘリウム中の不安定核イオンの振舞いの研究を、世界に先駆けて本格的に発展させるための可能性の追求と実験研究の準備を行った。超流動ヘリウム中において正イオンはそのまわりに50〜100個のヘリウム原子が誘電分極によって結びついた氷球粒子の形をとる。すでに1959年に発見されたものの、電流によるほかに有効な検出法がなく、その後の研究の大きな発展の障壁となっていた。今回、ベ-タ放射性核をもつイオンの氷球粒子を作ることによって、ベ-タ線による個々の氷球粒子の検出法を確立することができたので、超流動ヘリウム中の氷球粒子の物理を発展させるのが目的である。超流動ヘリウム中にβ放射性核を打ち込み、電磁場の下におけるそれらのイオンの輸送現象を研究する。イオンの検出には不安定核からのβ線を用いる。SISからの高エネルギ-重イオンが核反応によって生成する多種類のβ放射性核ビ-ムを用いることによって、多種のイオンの輸送現象を調べることができる。さらに、氷球粒子の構造と超流動ヘリウム中の素励起との相互作用を研究する。大阪大学、GSIおよびワイツマン研究所の協力研究により次の方向で本実験に至るまでの基礎準備研究が進展した。1)SISを用いる実験のための準備;ビ-ム輸送用イオン光学の決定のための討論と、超流動ヘリウム2)GSIにおいてユニラック加速器からの不安定原子核ビ-ムを用いた実験を行い、そのデ-タ解析をともに行うことができた。3)GSIにおいてイオン光学と核物理学の実験に参加し、加速器オペレ-タ-、電子回路や機械工作工場での作業依頼をスム-ズに行うなど、実際に実験研究を行うさいの問題点を解決する方法を探った。4)SISによって生成される不安定核ビ-ムの質量分析をなしうるビ-ム輸送系を検討した。5)大阪大学において超流動ヘリウム中の不安定核^<12>Bや^8Liを用いる実験、偏極保持の説明に不可欠の固体中の超微細相互作用について基礎研究と討論を行った。6)理化学研究所において中エネルギ-重イオン反応の実験研究を行い、不安定核に十分大きな核偏極が見い出し、超流動ヘリウム中における偏極不安定核のこの研究の将来に明るい見通しを与えた。SIS実験計画採択委から最近この実験計画に関して、この計画研究方法のもつ可能性の大きさが印象的であるとの推薦をもらい実験計画番号NO.123が割り当てられた。
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