研究課題/領域番号 |
01044088
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研究種目 |
国際学術研究
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
岸本 忠三 大阪大学, 細胞工学センター, 教授 (10093402)
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研究分担者 |
阪口 薫雄 佐賀医科大学, 助教授 (70192086)
竹森 利忠 国立予防衛生研究所, 細胞免疫部, 部長 (60114295)
高津 聖志 熊本大学, 医学部, 教授 (10107055)
奥村 康 順天堂大学, 医学部, 教授 (50009700)
笹月 健彦 九州大学, 生体防御医学研究所, 教授 (50014121)
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研究期間 (年度) |
1989
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キーワード | 日米免疫シンポジウム / Tリンパ球レセプタ- / 主要組織適合抗原(MHC) / IgMレセプタ- / リコンビナ-ゼ / インタ-ロイキン / IL-5 / IL-6 / MF-IL-6 / 急性期反応 |
研究概要 |
日米医学協力プログラムの主催による日米免疫シンポジウムは1990年1月に米国ニュ-オルリンズに於て日米双方の第一線級免疫学者が参加して行われた。又今回は免疫とは関連の深いエイズパネルと合同のシンポジウムとして開催され、双方の情報を交換することによりそれぞれの分野の進歩に寄与することを目的として行われた。 免疫系はリンパ球による抗原の認識と、認識の結果としてのリンパ球のエフェクタ-細胞への増殖分化により成り立っている。抗原認識に関わる分子即ちTリンパ球レセプタ-と主要組織適合抗原(MHC)、リンパ球の増殖と分化に関わるインタ-ロイキンは殆どその全てがクロ-ニングされ、構造が明かとなった。その結果として免疫系は、これらの分子の構造に基盤を於て、その研究が進められるようになった。当然この日米免疫シンポジウムに於いてもその主たるテ-マはMHC、Tリンパ球レセプタ-、Bリンパ球上のIgMレセプタ-、インタ-ロイキンに関するものであった。 マクロファ-ジやBリンバ球上のMHC分子は抗原フラグメントと結合して、Tリンパ球に提示される。この機構の詳細が化学的に解析され、ホスフォリピッドの存在がこの結合を強めること、1つのペプチドがMHCと結合して幾つかの形態をとりうること、MHCとペプチドとの結合が細胞内のエンドゾ-ムで起こること、細胞上ではMHCのペプチドの解離も速やかに起こり、MHCは次のペプチドとの結合に用意されうる可能性などが示された。MHCと抗原ペプチドはTリンパ球に認識される。その異常は自己の抗原を認識する自己免疫疾患の発症につながる。実験的アレルギ-性脳脊髄炎をモデルとして、これに関与するTリンパ球レセプタ-が詳細に解析されているし、又ヒトのHLAではDQとDRでは免疫応答の調節に関与する仕方が違う可能性などが示された。 Bリンパ球表面上のIgM分子はBリンパ球の抗原認識に関わっているがそのシグナルの伝達にはIgMレセプタ-に結合する他の膜蛋白が関与している可能性が示された。Tリンパ球やBリンパ球ではT細胞レセプタ-やIgMレセプタ-をコ-ドする遺伝子が再構成し免疫系の多様性を出現させる。この遺伝子の再構成に関与する分子としてリコンビナ-ゼの存在が予想されているが現在までその本体は捕まっていない。IgM分子やT細胞レセプタ-の再構成にはユニ-クなDNAのシグナル配列が関与し、当然このDNA配列を認識するDNA結合蛋白の存在が考えられる。今回はこのDNA結合蛋白のクロ-ニングとその構造の解明が報告された。 免疫系を調節するインタ-ロイキンに関しては、IL-5とIL-6に関して詳細な研究が報告された。IL-5レセプタ-を認識するモノクロ-ナル抗体が作製され、IL-5レセプタ-は主としてLy1B細胞に発現されていることが示された。IL-6は最も多彩な生物学的機能を発揮するサイトカインとして知られており、その発現異常は自己免疫疾患、ミエロ-マや腎細胞癌、メサンギウム腎炎などの発症に深く関わっていることが知られているが、今回はIL-6の発現を調節するDNA結合蛋白(NF-IL-6)のクロ-ニングとその構造の解明が報告された。興味あることはNF-IL-6はC/EBPとホモロジ-を有し種々のウィルスエンハンサ-に結合しうるということであり、ウィルス感染とIL-6発現の間に深い関連のあることが示唆された。又IL-6は急性期蛋白の発現を調節するが、NF-IL-6は急性期蛋白をコ-ドする遺伝子の調節領域にも結合することが示され、急性期反応に於けるpositive regulatory loopの存在が示唆された。
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