海馬における興奮性アミノ酸受容体に関する研究ー神経活性物質相関の立場からー

1990 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 01044100
• 研究機関: 放送大学
• 研究代表者: 鬼頭 昭三 放送大学, 教養学部, 教授 (00010140)
• 研究分担者: フィッシャー エドモンド ワシントン大学, 生化学教室, 教授 ; ジェンデン ドナルド カリフォルニア大学, ロサンゼルス分校・医学部, 教授 ; オルゼン リチャード W カリフォルニア大学, ロサンゼルス分校・医学部, 教授 ; 三好 理絵 東京女子医科大学, 助手 (80209965) ; 米田 幸雄 摂南大学, 薬学部, 助教授 (50094454)
• キーワード: 興奮性アミノ酸 / MK801 / グリシン / ポリアミン / 海馬 / 小脳 / 受容体結合実験 / NーMetylーDーaspartate受容体

研究概要

興奮性アミノ酸受容体は、現在NーmethylーDーaspartate(NMDA)型、AMPA型、カイニン酸型などのいくつかのサブタイプに分類されている。この中でNMDA受容体は、記憶・学習などの神経可塑性やアルツハイマ-病・けいれん・脳虚血などに伴う神経細胞脳死に関与している。本研究では、NMDA受容体の脳内分布・性質・加齢による影響を検討した。NMDA受容体の非競合的アンタゴニストであるMK801結合を受容体結合実験あるいはin vitroオ-トラジオグラフィ-により観察した。アイソステリックなアゴニストであるグルタミン酸やアロステリックアゴニストのグリシンとスペルミジンの添加は^3HーMK801結合を濃度依存性に増加させた。しかしながら、同じアゴニストでもグルタミン酸やグリシンとスペルミジンではその結合増強作用出現機序が明確に異なることがわかった。また、小脳ではスペルミジンが^3HーMK801結合を増強しないこと、小脳の^3HーMK801結合は海馬の場合に比べてアロステリックアンタゴニストによる阻害を受けにくいこと、小脳では海馬に比べてそれぞれ競合的アンタゴニストに対する感受性の低い^3Hーグルタミン酸結合と^3Hーグリシン結合が検出されることが明らかとなった。更に、NMDA受容体結合はグアニンヌクレオチドにより調節を受けることを認めた。受容体の形態学的研究の結果、^3HーMK801結合部位の分布は、昨年度までに我々が観察したストリキニ-ネ非感受性グリシン受容体やNMDAアンタゴニスト認識部位のそれとよい一致を示した。すなわち、^3HーMK801結合部位は、海馬CA1の放線層・多形細胞層に最も高濃度で、歯状回分子層・大脳皮質がこれに続いた。21ケ月齢の動物を用いて加齢による変化を観察すると、^3HーMK801結合は正常成熟動物と老齢動物で差はなかった。^3HーMK801結合の実験条件は、内因性アミノ酸の存在の問題を含め、trickyである為、現在更に検討を進めている。

研究成果

• [文献書誌] Miyoshi,R.: "Ageーrelated changes of strychnineーinsensitive glycine receptors in rat brain studied by in vitro autoradiography" SYNAPSE. 6. 338-343 (1990)
• [文献書誌] Kito,S.: "Influence of age on NMDA receptor complex in rat brain studied by in vitro autoradiogaphy" The Journal of Histochemistry and Cytochemistry. 38. 1725-1731 (1990)
• [文献書誌] Yoneda,Y.: "Inateraction of strychninーinsensitive glycine binding with MKー801 binding in brain synaptic membranes" Journal of Neurochemistry. 55. 237-244 (1990)
• [文献書誌] Yoneda,Y.: "Competitive inhibition of the NMDAーmediated responses by guanine nucleotides in brain synaptic membranes treated with Triton Xー100" Neuroscience Research. 9. 114-125 (1990)
• [文献書誌] Ogita,K.: "Solubilization of spermidineーsensitive [^3H](+)ー5ーmethylー10,11ーdihydroー5Hーdibenzo[a,d]cycloheptenー5,10ーimine(MKー801)binding activity from rat brain" Journal of Neurochemistry. 55. 1515-1520 (1990)
• [文献書誌] Miyoshi,R.: "Influence of age on NーmethylーDーaspartate antagonist binding sites in the rat brain studied by in vitro autoradiography" SYNAPSE. (1991)
• [文献書誌] Suzuki,T.: "NMDA Related Agents (Characterization of the NーmethylーDーaspartate receptor complex solubilized from rat brain)" NPP Books,Ann Arbor., (1991)
• [文献書誌] Yoneda,Y.NMDA Related Agents: "(Possible multiplicity of the NーmethylーDーaspartate receptor complex in rat brain)" NPP Books,Ann Arbor., (1991)