研究課題/領域番号 |
01044103
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研究種目 |
国際学術研究
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 山口大学 |
研究代表者 |
日下 達朗 山口大学, 農学部, 教授 (50038238)
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研究分担者 |
細山田 健三 宮崎大学, 農学部, 教授 (10040833)
早川 誠而 山口大学, 農学部, 助教授 (80038299)
丸本 卓哉 山口大学, 農学部, 助教授 (00035122)
鈴木 義則 山口大学, 農学部, 教授 (70081495)
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研究期間 (年度) |
1989
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キーワード | 土壌診断 / カナダ / アメリカ / 根圏 / 微生物バイオマス / イチゴ / 土壌水分 / 地中温度 |
研究概要 |
I.国際共同研究(カナダ・米国)における成果 1.根圏環境の直接診断を通しての畑作物の栽培管理技術の展開 カナダでは、根圏環境特性の物理的、化学的把握こそが生産の基本となるとの認識により、行政的立場から管内の畑の栄養状況の診断を行っている。例えば、サスカッチュワン州では、同州立大学構内に土壌診断専門機関として州立研究所を設置し、多数の専任技術者、優れた分析機器を備えている。農家に対しては、個々の畑に最も適した施肥設計を行うことができるように、土壌試料の採取法などきめ細かく指導している。採取時期としては10月を、深さとしては60cmまでを4層に分けて採取することとしている。そのサンプルを研究所で分析し、硝酸態窒素、硫酸態窒素、可溶性塩類の量等を決定し、最適施肥を提示している。ただし、栽培形態が土地利用型で面積も広大であるという理由のため、根圏熱環境に関連した実地診断は未だ行われていない段階である。 2.畑地の積雪・凍結診断と根圏熱環境の評価 グレ-トプレイリ-の北部寄りの地帯(米国・ミネソタ州近辺)では積雪が多くあり、その消長は畑作の栽培期間を左右している。積雪の消滅時期に関する研究が行われており、特殊なかつ簡単な積雪・凍結評価の器具ー化学薬品を使用ーを開発していた。そして、その周辺の気象環境を測定しつつ、熱収支の計算から、地中熱状況の事前評価法を求める努力をしていた。 3.地球温暖化の主要原因物質CO_2の植物による吸収 地球環境の保全を目標にビッグプロジェクトが展開されていた。アリゾナでは全米規模から選出された研究者のプロジェクトチ-ムが、FACE計画(Free Air Carbon-dioxide Enfichment Project)という研究を行っている。これは、広大な砂漠の潅漑農地の中でコンピュ-タで制御された装置が、自由大気の状態のままで、CO_2ガスを一定濃度に保ちつつ、そこで植物がどう反応するかを検討するものである。現時点では、生長量が増加し、大気中のCO_2ガスを減少させうるが、部分的にみると、器官によって影響力が異なる結果が得られている。このような大規模な野外実験は、日本では皆無である。 II.国際共同(国内)における成果 1.根圏土壌微生物バイオマスの影響と養分動態解析 畑作物根圏の土壌微生物バイオマスは、養分循環にとって重要な役割を果たしていることが知られていた。そこで、簡便で、土壌の微生物に対する影響を最小限にしながら、モデル根圏土壌を採取できるRhi20boxを考案した。従来の指による採取に比べて1/4以下の時間で採取できると同時に、得られたデ-タの誤差や振れも極めて小さくなり、再現性にも優れていることが示された。このRhi20boxの使用により、従来解明が難しかった作物根圏の養分動態が明らかに出来るものと期待される。 2.土壌水分および地中温度が畑作物の生育に及ぼす影響 イチゴの持っている生理・生態条件を生かしつつ、とくに作物生育中の根圏域の土壌水分および地中温度等を物理的に制御することにより、イチゴの光合成、生育作用および果実の品質に最も適する根圏物理環境条件の検討を試みた。1986年より4年間に亘るイチゴの栽培試験結果より、一応根圏環境要素とイチゴの生育との関係をまとめてみると、土壌中の栄養分として標準的な施肥栽培をした場合、(1)土壌水分を乾燥状態に制御すると収穫個数は増加するが、土壌水分を湿潤側に制御させると、果実重量は増加する。(2)総収穫重量を増加させる最適の土壌水分は、30.0%前後の含水比を示す時である。(3)果実の糖度は、地中温度を高め(28℃程度まで)に維持すると同時に、土壌中の水分として35.0%前後の含水比に制御するのが、最適のようであった。
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