研究分担者 |
ポール キンケード オクラホマ医学研究センター, 部長
ケンドール スミス ダートマス大学, 医学部, 教授
フリッツ メルシャーズ バーゼル免疫研究所, 所長
等 泰道 熊本大学, 医学部, 助手 (10222241)
富永 明 熊本大学, 医学部, 助教授 (50172193)
MELCHERS Fritz Director Basel Inst. Immunol.
SMITH Kendall Professor Dept. of Medicine, Dartmouth Med. Sch.
YASUMICHI Hitoshi Dept. of Biology, Inst. for Med. Immunol., Kumamoto U. Med. Sch.
KINCADE Paul Professor, chairman Dept. Immunobiol., Oklahoma Med. Res. Fndn.
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研究概要 |
インタ-ロイキン5(ILー5)はマウスB細胞や好酸球の増殖分化因子である。本研究はILー5とその受容体のB細胞活性化・増殖・分化に及ぼす役割を分子レベルで明らかにすべく共同研究することを目的としている。 ^<35>5ー標識ILー5反応性初期B細胞株T88ーMとの化学架橋実験よりILー5受容体は約60kDaと約130kDaの2つの分子が予想されていた。このうち約60kDaの分子はそのcDNAクロ-ニングと発現によりILー5とK_D数nMの親和力で結合することが判明した。またILー3反応性でILー5に結合性を持たないマウス骨髄細胞培養株FDCーP1にこの60kDaのILー5受容体(ILー5R)α鎖を発現させると,この細胞はILー5反応性と獲得し,上記細胞と同様のILー5との化学架橋実験の結果を示した。従ってILー5Rのβ鎖と予想される130kDaタンパク質はILー5結合性を持たないことが示された。またA.Rolink,F.Melchersらの作製したILー5のILー5反応性細胞への結合を阻害する抗体R52.120が130kDaの分子を免疫沈降させることもこのことを支持している。さらにFDCーP1がILー3反応性であることと,抗ILー3R抗体である抗Aicー2抗体がILー3の受容体への結合のみならず,ILー5の受容体への結合をも阻害し,しかも約130kDaの分子を沈降させることから,ILー5Rβ鎖は低親和性ILー3Rと類似の分子である可能性が示された。ところで既にMiyajimaらはAIC2Aと91%のアミノ酸配列の相同性をもつAIC2Bといろタンパク質を報告していた。そしてヒトにおいてはこの分子に相当するものは一個しか見つからず,しかもそれは既存のサイトカイン結合性を持たないことが判明した。このヒトのAIC2と相同性の高い分子KH97はヒトGMーCSFと低い親和性で結合するGMーCSFRα鎖と会合するとその親和性を高めることが知られる。従ってILー3,ILー5,GMーCSFの受容体がβ鎖を共有している可能性が強く示唆された。我々はマウスILー5Rα鎖が会合する約130kDaの分子がAIC2AかAIC2Bかを,安定なILー5Rα鎖を発現しているLtk^ー細胞(Lー5R)にAIC2AまたはAIC2Bを発現させることにより検討した。 この結果ILー5RαとAIC2Bの組み合わせ
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のみが高親和性受容体(K_D=14pM)と低親和性受容体(K_D=2.2nM)を発現した。ILー5RαとAIC2Aの組み合わせはK_D,2.3nMの低親和性受容体のみを発現した。従ってILー5Rのβ鎖は既存のサイトカインに結合性をまったく示さない分子でILー3R様の構之をした分子ということになる。AIC2に相当するヒトの分子KH97はILー3,ILー5,GMーCSFに対する受容体の構成分子であることが予想されるに致った。またILー3,ILー5いずれの刺激でもT88ー7細胞で140kDa,92ーkDa,53ーkDa,48ーkDa,45ーkDaのタクパン質がチロシン残基で,60kDaのタンパク質がゼリン残基でリン酸化されていることから,ILー3とKLー5のシグナル伝達が共通なメカニズムを使っていることが予想された。我々はヒトKLー5Rの構造と機能を明確にするために,そのcDNAを単離し,その性状について検討した。マウス低親和性ILー5RのcDNAをプロ-ブとして用したクロスハイブリダイゼ-ション法により,ヒト好酸球ライブラリ-からcDANクロ-ンを単離した。このcDNAはマウスILー5Rの鎖と約70%のアミノ酸配列の相同性をもつ分子をコ-ドしていた。このヒトILー5Rの鎖はそれ単独でCOS細胞上に発現させた場合,ILー5とK_D=250ー590pMで結合し,マウスのα鎖に比して10倍近く高い親和性を示した。しかもこの値は正常ヒト好酸球上にみられる単一の親和性を示すILー5RのK_D値(170ー330pM)と一致する。従ってひとILー5Rの場合,β鎖の親和性増加への寄与はきわめて小さいと考えられた。しかし原則的にはヒトにおいてもβ鎖は,α鎖の種間の相同性の高さからAIC2B類似のKH97と予想される。またILー5Rの鎖の細胞外領域はフィブロネクチンIII型ドメイン構造が3回繰り返す構造をとっており,サイトカインレセプタ-ファミリ-に特徴的な2つのシステイン残基対と“WSXWS"モチ-フを保存していた。またマウスILー5Rα鎖とヒトILー5Rα鎖の違いはILー5との親和性の違いだけでなく,ヒトの場合膜貫通部を含む3'側に多様性が大きいことがあげられる。このことは単に可溶性ILー5Rの量的な違いを示すだけではなく,何かスプライス機構の違いのようなことを示唆していると考えられる。 隠す
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