研究課題
国際学術研究
北大流氷研究施設ーアラスカ大海洋研究所国際共同研究の目的当共同研究の目的は2つに大別される。1つは、海氷生成に伴う大気ー海洋間の熱、運動量、炭酸ガス、水蒸気の交換メカニズムの研究等地球環境、気候変動予測に関わる研究である。もう1つの面は、海氷による太陽光線の反射、光の消散、水塊構造変化等海氷の消長が海洋生物環境へ与える影響を明かにすることである。このために3年間にわたって、北極海アラスカ沿岸、ハドソン湾の発達した海氷域と典型的氷縁海であるオホ-ツク海北海道沿岸で以下の観測を実施し、極域、氷縁海の比較研究を行った。研究課題1.海氷生成による大気・海洋間の熱、運動量、物質(水蒸気、炭酸ガス)の輸送機構の変化および氷下乱流境界層の物理過程の研究.[研究成果]オホ-ツク海沿岸の薄氷域に設置されている北大結氷域気象・海象観測システムによる3流氷期間の連続観測、サロマ湖氷上での集中観測(1992年、現在も観測継続中)、ハドソン湾(1989〜1991)、北極海アラスカ沿岸(1992年)での発達した氷域で観測を実施した。その結果、地球環境変動予測の研究に重要な結氷海域とくにこれまでデ-タの少なかった氷縁域における大気ー海洋間の熱輸送係数、運動量輸送係数等種々の物理過程パラメ-タを得ることができた。研究課題2.海氷中の微小藻類(植物プランクトン)と海氷の化学組成、結晶構造、栄養塩類の分布等海氷と生物環境の関わりについての研究.[研究成果]海氷中には藻類生育に充分な栄養物質含まれており、海氷中の微小藻類(アイスアルジ-)量は、豊かな非結氷海と同程度に豊富であることが明かとなった。また、海氷中の光合成藻類の量、およびその分布は、海氷の成長速度に支配されることが明かにされた。この成果は海氷生成と海洋の基礎生産、海洋水産資源の関係研究の第一歩となるものである。研究課題3.音響学的手法による結氷海域の生物、氷状変化の検知法の研究.[研究成果]水中マイクロフォンで得られる結氷域の水中音響の解析によって、氷海域の哺乳動物の挙動、海氷の破壊、屈曲等の海氷の動態が進められた。研究課題4.海氷による日射の減衰と生物光環境の研究.[研究成果]オホ-ツク海沿岸の定着氷および海上保安庁の巡視船"そうや"による沖合い結氷域において、光量子量(日射の強さ)とクロロフイルーaの鉛直分布の観測を実施した。結氷域での光環境と生物量、栄養塩分布の関係については現在解析中である。研究課題5.オホ-ツク海北海道沿岸の結氷開始時期および氷厚の予測法の確立.[研究成果]オホ-ツク海北海道沿岸の結氷初日および氷厚を気象条件(気温、風速)から推定することを試みた。実測との比較の結果、その実用性が確かめられた。この成果は、今後の結氷沿岸域の水産、航行の安全に有効に活用され得るものである。研究課題6.オホ-ツク海北海道沿岸の流氷勢力の長期変動.[研究成果]北大流氷観測レ-ダ-による23年間の流氷勢力と気温との関係を調べ、気候温暖化による沿岸の流氷勢力への影響を予測した。その結果、秋から冬3月までの平均気温がこれまでよりも3度上昇すと沿岸流氷は生成されないこと等が予測されたこの成果は気候温暖化によって氷海域の海洋生物環境、海洋生産力が如何なる影響を受けるかを研究する上で重要なものである。
すべて その他
すべて 文献書誌 (11件)