山東省経済開発と日中経済交流の発展可能性ー山東半島を中心にー

1991 年度 研究成果報告書概要

• 研究課題/領域番号: 01045024
• 研究種目: 国際学術研究
• 配分区分: 補助金
• 応募区分: 大学協力
• 研究機関: 山口大学
• 研究代表者: 座間 紘一 山口大学, 経済学部, 教授 (30034870)
• 研究分担者: 黄 金平 山東大学, 経済学院, 講師 ; 染 樹新 山東大学, 経済学院, 講師 ; 張 欽先 山東大学, 経済学院, 副教授 ; 張 虹 山東大学, 経済学院, 教授 ; 欧 是 山東大学, 経済学院, 教授 ; 庄 徳釣 山東大学, 経済学院, 教授 ; 会田 忠義 山口大学, 工学部, 教授 (50035036) ; 村田 秀一 山口大学, 工学部, 教授 (80044618) ; 藤原 貞雄 山口大学, 経済学部, 教授 (10034878) ; 吉村 弘 山口大学, 経済学部, 教授 (30034862) ; HUANG Jin-ping Shandong Univ. Instructor ; LIANG Shu-xin Shandong Univ. Instructor ; ZHANG Oin-xian Shandong Univ. Assistant Professor ; ZHANG Hong Shandong Univ. Professor ; ZHUANG De-zhun Shandong Univ. Professor ; MURATA Syuichi Yamaguchi Univ. Professor
• 研究期間 (年度): 1989 – 1991
• キーワード: 中国経済 / 日中経済交流 / 日本企業の対外投資 / 日本企業の対中進出 / 山東省の対外開放 / 山東省の経済開発 / 山東省の外資導入 / 日本企業の山東省への進出

研究概要

1、3年間で、3度の訪中調査、1度の中国側研究者を迎えての福岡・広島・大阪の行政、企業調査、山口・広島・福岡の対中進出企業に対するアンケ-ト調査、中国企業および従業員に対する等アンケ-ト調査及び山東大学経済学院との研究交流を行った。
2、山東省および沿海開放都市の青島・煙台・威海の経済開発、対外開放の実態と日中経済交流の現状の経済的諸問題および山口・広島・福岡の対中進出企業の実態については調査を通じて多くの知見が得られた。青島、煙台の「経済技術開発区」の土地利用や基盤整備、幹線交通計画など工学的研究および中国側企業とその従業員へのアンケ-ト調査研究に関しては十分な資料と調査が出来ず結果を纏めるに至らなかった。
3、3年間の研究で得られた知見は以下の通りである。
(1)総論:山東省は日本、韓国、中国の山東・遼寧等の「環黄海経済圏」の推移と共に注目を集めるであろう。そこでは日本と山東省の連携強化が重要不可欠な要因である。山東省は農工業のバランスがとれ、自然資源、特に石油、石炭などのエネルギ-源に恵まれ、工業力も高いが、先端技術部門が弱く、今後の伸長が課題である。山東経済では新たな産業体系の創生、一次産品輸出、技術・プラント輸入パタ-ンからの離脱が必要である。他にリゾ-ト開発、第三次産業の育成が重要である。九州・山口との経済関係では同地区の企業の対中進出は僅かであるが、今後は貿易、投資とも増加すると見通される。経済交流の活発化のためには開発誘導機能を備えた情報交流機関や公的な労働力訓練機関の設置、相互の優れた経験の交流などが必要である。
(2)山東省の経済改革・対外開放の経過と現状:郷鎮企業や農村の非農業が発展し始めたが、村や郷(鎮)レベルの集団の農民に対する規制力はまだ大きい。企業と地方の経済自主権が拡大し、市場対応の条件が形成途上にあるが、企業はまだ職住一体の小社会的性格を持ち、社会の行政的、官僚主義的ヒエラルキ-構造は不変である。財政バランスが比較的安定しているが、開発や開放は国営企業の低収益、農産物や原油の国際価格の低位による財政力の制約を受けている。山東半島の経済開放区指定以後、青島、煙台、威海を窓口として対外的連携を強め、その波及力を全省に及ぼし、開発を引っ張る方針が採られている。基地である青島と煙台の「経済技術開発区が90年代に急速に整備され、外国の投資も増加し始めた段階にある。省内と渤海沿岸地域の横の経済的連合は余り進んでいない。
(3)在山東省合弁企業の概況:山東省にある合弁企業は全部で88社で全体の5.2%にすぎない。このうち日系合弁企業は28社で在中国日系企業全体の4.4%を占めるにすぎない。山東省の日系合弁企業は業種、生産品目とも広範囲にわたっている。投資規模は一概に小さいとはいえない。投資は80年代後半に増加し、製造業は日本向け輸出を目的としている。投資環境ではインフラの未整備、「体制的コスト」負担、アクセス問題がある。合弁企業の果たす役割としては、日本の生産管理や製品管理技術がもたらす効果は大きい。
(4)山口、広島、福岡の対中進出企業からみた日中経済交流の現状と課題:経済交流している企業は業種別のは製造業と卸小売業に集中し、規模では中堅企業が多い。経済交流は中堅企業によって支えられている。形態は殆どが貿易のみであり、企業進出は僅かである。現在経済交流はないが、計画中・検討中・関心をもっている等の企業は約30%もある。発展の余地は大きい。輸入品は農林水産食料品軽工業品に集中しており、輸出品は機械・鉄鋼・化学製品に集中している。1社あたり取引金額は小規模である。貿易の成果には全般的にみて不満の方が多い。その将来展望は「拡大したい」が断然多く、取引意欲は大きいといえる。
(5)山東大学側の研究は中日経済協力の現実的必然性、中日経済協力の歴史的回顧、山東省と西日本の経済協力の現状と可能性、考察を深めるべき諸問題からなる。歴史的経緯を踏まえて、今後の経済交流の発展の為に山東側は外向型経済への転換と経済効率向上、国際慣行遵守、価格体系の整備、投資環境整備等を進め、日本企業の長期的視野にたった積極的な貿易と投資を行う必要性を述べている。

研究成果

• [文献書誌] 安部 一成: "山東省の経済開発と日中経済交流の発展可能性・総論" 東亜経済研究. 53. (1992)
  • 説明: 「研究成果報告書概要(和文)」より
• [文献書誌] 座間 紘一: "山東省の経済改革・対外開放の経過と現状" 東亜経済研究. 53. (1992)
  • 説明: 「研究成果報告書概要(和文)」より
• [文献書誌] 藤原 貞雄: "山東省進出日系企業の現状と課題" 東亜経済研究. 53. (1992)
  • 説明: 「研究成果報告書概要(和文)」より
• [文献書誌] 吉村 弘: "日中経済交流の現状と課題ー山口、広島、福岡の企業アンケ-ト調査ー" 東亜経済研究. 53. (1992)
  • 説明: 「研究成果報告書概要(和文)」より
• [文献書誌] 張 喜民: "中日経済協力の現実的必然性" 東亜経済研究. 53. (1992)
  • 説明: 「研究成果報告書概要(和文)」より
• [文献書誌] 張 欽先: "中国と日本の経済関係の歴史的回顧" 東亜経済研究. 53. (1992)
  • 説明: 「研究成果報告書概要(和文)」より
• [文献書誌] 欧 是: "山東省と西日本との経済協力の現状と可能性についての研究" 東亜経済研究. 53. (1992)
  • 説明: 「研究成果報告書概要(和文)」より
• [文献書誌] 庄 徳釣: "考察を深めるべきいくつかの問題" 東亜経済研究. 53. (1992)
  • 説明: 「研究成果報告書概要(和文)」より
• [文献書誌] KAZUNARI Abe: "Economic Development of Shandong Province and Possibility of Future Growth on Economic Interchange between Japan and China : General Remarks" The Toa-Keizai Kenkyu (Asian Economic Review). 53, Nol 1・2. (1992)
  • 説明: 「研究成果報告書概要(欧文)」より
• [文献書誌] KOICHI Zama: "Process and Present Condition of Economic Reform and Open-door Policy of Shandong Province" The Toa-Keizai Kenkyu (Asian Economic Review). 53, Nol 1・2. (1992)
  • 説明: 「研究成果報告書概要(欧文)」より
• [文献書誌] SADAO Fujiwara: "Present Condition and Expectation of Japanese-Chinese Joint Companies in Shandong Province" The Toa-Keizai Kenkyu (Asian Economic Review). 53, Nol 1・2. (1992)
  • 説明: 「研究成果報告書概要(欧文)」より
• [文献書誌] HIROSHI Yoshimura: "Present Condition and Expectation of Economic Interchange between Japan and China --- Questionnaire to Corporations in Yamaguchi, Hiroshima, Fukuoka Prefectures" The Toa-Keizai Kenkyu (Asian Economic Review). 53, Nol 1・2. (1992)
  • 説明: 「研究成果報告書概要(欧文)」より
• [文献書誌] SHI-MIN Zhang: "Necessity of Economic Cooperation between China and Japan" The Toa-Keizai Kenkyu (Asian Economic Review). 53, Nol 1・2. (1992)
  • 説明: 「研究成果報告書概要(欧文)」より
• [文献書誌] QIN-XIAN Zhang: "Reflection upon Economic Relation between China and Japan" The Toa-Keizai Kenkyu (Asian Economic Review). 53, Nol 1・2. (1992)
  • 説明: 「研究成果報告書概要(欧文)」より
• [文献書誌] SHI Ou: "Present Condition and Expectation of Economic Cooperation between Shandong Province and West-Japan" The Toa-Keizai Kenkyu (Asian Economic Review). 53, Nol 1・2. (1992)
  • 説明: 「研究成果報告書概要(欧文)」より
• [文献書誌] DE-JUN Zhuang: "Some Problems for Future Considerations" The Toa-Keizai Kenkyu (Asian Economic Review). 53, Nol 1・2. (1992)
  • 説明: 「研究成果報告書概要(欧文)」より