研究課題
本研究の目的は、細胞膜上のレセプタ-とチャンネルの活性化がどのように細胞内の信号に置き代わり、様々な細胞反応を引き起こすのかを解明するものである。このために研究材料として、大腸の杯細胞における分泌反応がウサギなどでは簡単に観察できるので同様の組織を中国産の下等霊長類に求めることを計画していたが、きわめて発達が悪く、分泌反応も観察できないことがわかった。そこで、代替となる組織を探査したところ、同じ動物の唾液腺は導管が腺房末端まで連続するというユニ-クな構造を持ち、かつ開口分泌の活動性が高く、長持ちするという、我々の目的に大変よい標本であることがわかった。そこで主としてこの組織のアゴニストを検定した。通常ラットではβアドレナ-ジックな刺激で開口分泌を引き起こせるが、この動物では同じ刺激が殆ど効かなかった。代わりに、ムスカリニックな刺激が高い有効性をもっていた。他に、K脱分極刺激、プリナ-ジックな刺激も有効であった。ムスカリニックな刺激は細胞内のcAMPと促進的に作用することがわかった。このことは、細胞内メッセンジャ-としてAキナ-ゼ系が働いていることを示しているが、ムスカリニックな刺激はこの系を介しておらず、Cキナ-ゼ系かCaカルモジュリンキナ-ゼ系であることが考えられる。次年度はこの点をさらに堀り下げる計画である。同じ組織で、水の分泌反応も導管の内径の脈動的な変化からほぼ直接的に観察できる。次年度もこれについて研究を進める。培養細胞においては、Ca依存性Kチャンネル活動が測定できたが、そのブロッカ-等を見つけることはできず、どのタイプに属するものが未決定のままに残された。このチャンネルは、細胞内Caイオン濃度の上昇が細胞反応を引き起こす際に重要な役をしていることが考えられるので次年度の研究対象として残す予定である。