研究課題
本年度は最終年度としてツパイ唾液腺の刺激分泌関連における信号伝達系の研究を進め、さらに網膜水平細胞のカイニン酸応答のモジュレ-ションの研究を平行して行った。1.ツパイの顎下腺と舌下腺において唾液分泌量を測定するとともに、微分干渉顕微鏡下にエキソサイト-シスを観察した。顎下腺はイソプロテレノル(IPR)とアセチルコリン(ACh)の両方の刺激に反応したが、舌下腺はIPRに反応しなかった。顎下腺ではACh刺激にIPR刺激を重畳すると、分泌液中に1ミクロン程の大きさの微小顆粒が多数出現することがわかった。これら全ての反応は、細胞外液中のCaイオンを取り除くと抑えられた。顎下腺におけるエキソサイト-シス反応は、IPR、ACh両方で引き起こされたが、別々の細胞が反応した。舌下腺はAChにのみ反応した。高濃度のATPもエキソサイト-シス反応を引き起こした。8BrーcAMPはACh反応を増強した。いくつかのプロテインキナ-ゼC活性化剤は無効であった。Kー脱分局刺激は腺房細胞に対する直接作用を持たなかった。以上のことから、舌下腺腺房細胞ではAキナ-ゼ系、Cキナ-ゼ系のいずれとも違うメッセンジャ-系によってエキソサイト-シスが制御されることが明らかとなった。2.コイの網膜から水平細胞を単離し、カイニン酸応答を測定した。カイニン酸は50μMでほぼ矩形波状の内向き電流を発生させた。このようなカイニン酸の応答は、ドパミンを重畳投与すると修飾されることがわかった。ドパミンの濃度が20μM、または、100μMのときには応答は抑制され、50μMのときには促進された。ドパミンアンタゴニストであるハロペリド-ルはドパミンの効果を抑制した。このようなアゴニスト間の相互作用はcGMPを中心とする細胞内メッセンジャ-系の修飾に起因しているものと考えられる。
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