研究課題
本調査研究では、将来の技術に共通する基盤となる基盤技術(いわゆるジェネリック・テクノロジ-)の大学等における研究実例を調査し、その発生の背景を解析すると共に、大学等に役割と貢献の実績を調査し分析した。得られた結果は、次のように要約できる。1 米国におるるジェネリック・テクノロジ-の概念について: ジェネリック・テクノロジ-という言葉が日米科学技術協力協定の過程において米国から出されたものであることに鑑み、米国においてどのような意味で使われているかを、文献及びNSF等との接触により調査した結果、ジェネリック・テクノロジ-という言葉は、学術用語ではなく政策的な意味で用いられており、「製造業における技術革新に対する政の援助の必要性に関連して、基盤研究とは異なり、商業化の意味の大きい技術」として用いにれていることが明確となった。2 ジェネリック・テクノロジ-の具体例: ジェネリック・テクノロジ-を「(1)あるブレ-クスル-を実現し、広範かつ永続的な意義をもつ基本的技術、(2)既存技術を画期的に改善し(1)にいう技術と同等な生命を与えた技術、(3)世界の技術の基準・標準しなる装置の開発・デ-タの蓄積、(4)きわめて普遍的な生産技術、のいずれか」と定義した上で、わが国おける発生の状況を、科学技術長官賞、学士院賞、及び大学工系の学部・大学院・附置研究所の長に照会したものを母集団として、その中から選定した結果を掲げた。3 ジェネリック・テクノロジ-の特徴: 上記の実例を分析し、(1)分野により概念の偏りが見られること、(2)技術のイノベ-ションレベルによって、ジェネリック・テクノロジ-の意味が異なること、(3)ジェネリック・テクノロジ-とは後追いで見いだされるもので、現在のある技術がジェネリック・テクノロジ-となるかどうかは、その周辺技術の発展にかかっていること、等を明かとした。4 日本の大学におけるジェネリック・テクノロジ-創成の基盤: 大学の工学系の学部長・大学院研究科の長・附置研究所長に、アンケ-ト調査をした結果、をしている。大学においてジェネリック・テクノロジ-が発生しているとするものは回答の60%に達しており、ジェネリック・テクノロジ-を生み出す基盤としてのセンタ-オブイクセレンスも存在している、との見解が多数である。今後のセンタ-オブイクセレンスの育成のために、民間等から大学に資金が流れ易くする措置を望むものが多いことが明らかとなった。5 ジェネリック・テクノロジ-創出のための条出: 以上の分析の結果を取りまとめ、技術の継承、新しい概念の堤供、研究集団がクリスティカルマスを達成することの重要性、フロンティアの努力、柔軟な考え方体制、が重要であることを指摘している。