研究分担者 |
安倍 弘彦 久留米大学, 医学部, 助教授 (20080658)
神代 正道 久留米大学, 医学部, 教授 (90080580)
岩田 志郎 京都大学原子炉実験所, 教授 (50027398)
加藤 義雄 放射線医学総合研究所, 養成訓練部, 部長 (30161128)
森 武三郎 放射線医学総合研究所, 生理病理研究部, 主任研究官 (00124248)
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研究概要 |
平成2年度では,平成元年度からの課題を更に進めて以下の如き成果が得られた。 1.疫学的研究:トロトラスト被注入者群では肝癌,肝硬変,白血病,トロトラスト肉腫,てんかん,肝外胆管癌,腹膜悪性腫瘍などの死亡率が高く,またトロトラスト注入量と死亡率との間には量・反応関係があり,注入量の増大と共に注入後余命の中央値の減少することが判明した。 2.線量評価:トロトラスト被注入者の呼気中のトロン濃度の測定結果から,肺胞領域のα線吸収線量率は約1rad/yと推定された。高LET放射線による肺癌発生と吸収線量との関係は今後更に検討を要する問題である。また,原子炉中性子による放射化分析法を用いて臓器組織中のトリウム含有量を求める方法を確立した。 3.臨床病態:トロトラスト被注入者では,網内系細胞の貧食能が低下し,エンドトキシン血症をきたしやすいこと,トロトラスト肝線維症では,門脈域及び類洞に沿ったTypeIIIコラ-ゲンを主体とした線維化と限界板部のTypeIコラ-ゲンの増生が特徴的なものであった。 4.病理学的研究:胆管癌についてトロトラスト症例と非トロトラスト症例を比較検討した結果,前者では95.4%が肝の末梢・中間部に,後者では77.7%が肝門部に発生しており,小葉間胆管がトロトラストの沈着障害を受け易く,肝末梢部あるいは中間部に癌の発生が集中するものと思われる。脾臓におけるトロトラスト沈着はリンパ濾胞,動脈周囲リンパ鞘,濾胞周辺帯や脾柱及びその周囲に強く,これらの部位より線維化が進展し,遂には線維性の萎縮脾の状態になるものと考えられる。線維性萎縮脾の状態では,脾機能は低下しており赤血球内にしばしばHowellーJolly小体が出現してくる。なお少数の脾腫大をきたす症例では,食道靜脈瘤を合併し,その破裂が死因となっていることが多かった。
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