研究課題
精神障害者の地域ケアを推進させる上で重要と考えられる、「受け皿」としての家族および支持的ネットワ-ク(家族等)の役割や機能を、病気の予後や経過との関係で明らかにすることを目的にして、今年度は、「受け皿」としての家族等の機能を最も妥当に評価し得る方法の検討を行った。欧米で大きな成果をあげた家族の感情表出(EE)研究を、わが国で適用するために、面接票の翻訳、英語標本での訓練(16例)、日本語標本での施行(35例)、両標本における評価の信頼性検定を行った他、EE以外の諸外国で既に用いられている尺度の翻訳と標準化、及び独自尺度の開発を行い、EEを含む家族測定尺度の相互関連性を検討した。また、再発を評価するための方法を文献的に検討すると共に、症状測定尺度BPRSと全体像評価表GASを使用するために評定者間信頼性の検討を行った。1.再発評価を行うための症状評定は協力病院の主治医が行うため、複数の医師によるBPRS(18下位尺度)とGASの評定者間信頼性を検討した。ANOVA ICCの値は.42〜.98で、平均.77であった。2.英語標本におけるEE5下位尺度の信頼性は、ANOVA ICCが.64〜.77で平均.70、相互の相関係数は.45〜.94で平均.71、モデル得点との相関係数は.58〜.97、平均.76であり、4名の評価者とも国際的に認められた基準に達していた。3.日本語標本における信頼性に関しては、ANOVA ICCが.08〜.87で平均.67となる。EEの下位尺度の「敵意」の評定者間信頼性が低く、不一致の原因を検討した。「敵意」を除く相互の相関係数は平均.79である。4.EE下位尺度と、他の家族機能測定尺度との関連は、概ね類似の概念を測定する項目との相関が高く、双方の尺度の妥当性を裏付けている。今後、測定尺度の信頼性を高めると共に、研究の本来の目的である家族機能と再発予後との関連性を検討していく予定である。
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