初年度である平成元年度は、試料吊下シェルタ-、百葉箱、自記温湿度計等の観測機器を中心に購入した。これらの機器を、春日大社・東大寺・興福寺・正倉院・平城宮跡・薬師寺・奈良大学・大阪石切神社の合計8カ所に設置し観測を始めた。シェルタ-内に吊下したトリエタノ-ル円筒3紙による大気汚染物質の測定では、CIは奈良大学・薬師寺において比較的多く検出され、SO_2は総ての観測点で比較的多く検出されている。短期日の観測であるため、微地形・微気候・自然環境等と、汚染源との因果関係は明確にすることはできなかったが、観測点によって大気汚染物質の種類と量に明確に差がみられることから、観測デ-タ-を集積していけば、これらの因果関係が明確にできるものと予想している。一方、金属試験体(銀・錫・鉛・鉄・銅)の経時変化については、1カ月ごとの回収測定を行なっているが、変化が測定できないため、今後3〜6ヵ月ごとの回収測定とする。金属試験体の表面変化(酸化膜の発生・色調の変化とその原因)を解明することにより、大気汚染物質であるCl、SO_2、NO_2のいずれかが、どの金属に大きく作用するのかが判明するものと予想している。長期観測デ-タの収積・分析を今後継続したい。
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