研究分担者 |
伊藤 博明 埼玉大学, 教養部, 助教授 (70184679)
矢内 光一 横浜国立大学, 教育学部, 助教授 (70092533)
片山 英男 東京大学, 文学部, 助教授 (70114436)
西本 晃二 東京大学, 文学部, 教授 (00012352)
大谷 啓治 上智大学, 文学部, 教授 (30053557)
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研究概要 |
本科学研究費補助金による研究会と研究成果報告書を通じて,多方面にわたるルネサンス・プラトン主義の展望が,恐らくわが国において初めて,かなりまとまった仕方で見通せるようになってきた。12世紀のシャルトル学派を中心とした中世的プラトン主義は,その自然学的な面に特色があった。これに対して,14世紀のペリラルカ以来いわゆるルネサンス・ヒュ-マニストたちによるプラトン主義復興は,キケロ的修辞学や道徳哲学と結びついた問題関心のもとに展開された。さらに15世紀初頭のブル-ニやデチェンブリオなどによるギリシャ復興と関連したプラトン主義への関心はしだいに政治学的なものとなり,15世紀後半におけるフィレンツェのプラトン・アカデミアにおける関心は主として形而上学的なものとなった。ゲミストス・プレトン以来,prisca theologiaと呼ばれたゾロアスタ-の教えや,古代カルデアの神託や,オルペウス教やピュタゴラス教団の教え等がプラトン主義と混交し,さらにフィチ-ノにおいてはヘルメス主義や新プラトン主義の影響が顕著になり,ピ-コではユダヤのカバラがプラトンやアリストテレスと同様に重んじられた。こうしてルネサンス・プラトン主義はシンクレティズムの傾向を強くした。しかもそれらの変容を通じてプラトン主義はつねに審美的関心によって伴われていた。実際,ルネサンスの文学や美術にあたえたプラトン主義の影響は甚大なものがある。ルネサンス・プラトン主義者が目指した世界は,もはや「神の国」でもなければ,いまだ「商品世界」でもなく,まさにユ-トピア的」文学共和国」にほかならなかった。われわれはこれらの問題を各研究者が所属する専門的な学問分野ごとに検討し,研究会において総合的に討議した。このルネサンス・プラトン主義の学際的研究は当初の予想以上に生産的な成果をもたらし,今後のルネサンス研究に新しい展望をあたえるものとみなされる。
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